研究課題
生物は日長や温度の変化を手がかりにして季節を感知する。近年の鳥類や哺乳類の研究から、日長情報の脳内情報伝達経路が明らかにされてきたが、「日長を測定するしくみ」の解明は主要な問題として残されている。研究代表者は、長日繁殖動物であるメダカについて、青森から沖縄まで日本各地に由来する21の野生系統と4つの近交系を用いて日長変化に応答した生殖腺の発達および退縮を解析し、(1)「非繁殖期から繁殖期への移行に必要な日長(臨界日長)」、および、(2)「短日処理による繁殖停止の誘導」に地理的変異があることを見出した。本研究では、季節繁殖を司る日長測時の分子機構を解明することを目的として、これらの日長応答形質の系統差を利用した遺伝学的解析を行った。まず、F2 世代を用いた量的形質遺伝子座(QTL)解析を行い、(1) 「臨界日長」に関わるQTLsを5, 14, 16番染色体に、(2)「短日応答」に関わるQTLを9番染色体にマップした(有意水準1%)。さらに解析に用いた系統について全ゲノム配列を取得して一塩基多型 (SNPs)、挿入/ 欠失 (indel)を同定した。本年度は、QTL領域の遺伝子について、SNP解析によるアミノ酸置換の検出、また、リアルタイムPCR(qPCR)、RNA-seq法によるトランスクリプトーム解析からmRNA発現量を系統間で比較し、候補遺伝子を検討した。短日応答に関しては、さらに、QTL領域の詳細マッピングおよび関連解析を行うことで原因領域を絞り込んだ。今後、候補遺伝子について、機能欠損変異体の日長応答における役割を解析し、日長測時に関わる遺伝子とその機能を明らかにする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
General and Comparative Endcrinology
巻: 260 ページ: 171-174
10.1016/j.ygcen.2017.12.010. Epub 2017 Dec 27.
Nature Communications
巻: 8 ページ: 412
10.1038/s41467-017-00432-8.