研究課題/領域番号 |
15K07165
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 絵理子 山形大学, 基盤教育院, 准教授 (20337405)
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研究分担者 |
渡邉 明彦 山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
越智 陽城 山形大学, 医学部, 准教授 (00505787)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 精子運動開始因子 |
研究実績の概要 |
1、SMIS遺伝子ノックアウト(KO)アカハライモリの作成:H27年度に確立した実験系を用いて、CRISPER/CAS9システムによる精子運動開始因子SMIS(Sperm Motility-Initiating Substance)遺伝子KOアカハライモリの作成を行った。H28年春期採集のメス個体から採取した卵を受精させ、H27年度に有効性を確認したsgRNAとCas9タンパク質を注入、発生させた。幼生の尾からゲノムDNAを抽出、HMAにより変異体と推定された個体についてDNAシークエンス解析により塩基の変異の確認した。またH28年秋期採集のメス個体より採取した卵を用いて、sgRNAとCas9タンパク質注入のタイミングを検討し、より効率の良い変異導入が期待されるタイミングでの注入操作を行った。現在標的配列における塩基の変異の導入の評価を行っている。 2、モリアオガエルSMIS相同遺伝子の同定:H27年に凍結保存したRNAを用いて行っていたRNAseqの結果の解析を行ったところ、モリアオガエルSMIS相同遺伝子は確認されなかったため、H28年春の繁殖期に採集したモリアオガエルメス輸卵管よりRNAを抽出、RNAseqを行ったが、SMIS相同遺伝子の同定には至らなかった。その後、RNAの抽出部位及び抽出方法の検討を行い、また、採集個体を用いたため輸卵管がSMIS遺伝子発現の状態になかった可能性が存在することから、飼育下で性腺刺激ホルモンを投与後の個体の輸卵管から新たにRNAを抽出し、現在RNseqを行っている。 3、有尾両生類SMIS相同遺伝子の同定:体外受精様式を持つ両生類としてモリアオガエルに加えて有尾両生類トウホクサンショウウオ、及び体内受精様式を持つ両生類としてアカハライモリに加えて有尾両生類アホロートルの輸卵管より新たにRNAを抽出し、RNAseqを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SMIS遺伝子KOアカハライモリ作成に関しては、これまでに標的配列に変異を持つ個体が作成され、H29年度に解析を行う計画である。 SMIS遺伝子KOモリアオガエルの作成に関しては、現在モリアオガエルSMIS相同遺伝子の同定を行っている。研究開始がH27年10月であり目的とするRNA抽出に適したモリアオガエルを使用することが困難であったことから、H27年度では凍結保存済みのRNAを用いてRNAseqを行った。H28年度にこのRNAseqの結果を解析した結果、モリアオガエルSMIS相同遺伝子は確認されなかった。H28年春に野外から採集した個体を用いて行ったRNseqにおいてもSMIS相同遺伝子を同定することはできなかった。現在、性腺刺激ホルモン投与飼育個体を用いたRNAseqを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1、SMIS遺伝子KOアカハライモリの作成 H28年度までに作成されたKO個体において人為的に排卵誘発を行い、解析に用いる。走査型電子顕微鏡による卵ジェリー層における顆粒構造等の微細構造の解析、抗SMIS抗体を用いた卵ジェリー層及び卵ジェリーを分泌する輸卵管におけるSMIS局在様式の解析を行う。さらに、卵ジェリー層上及び卵ジェリーからのSMIS抽出液中における精子の運動を解析する。また、野生型オスと交配させたKOメス個体の貯精嚢において貯蔵された精子の受精能の評価を行う。 2、モリアオガエルSMIS相同遺伝子及び有尾両生類SMIS相同遺伝子の同定 現在性腺刺激ホルモン投与飼育個体輸卵管より抽出したRNAを用いて、商業サービスに依頼してRNAseqを行っている。RNAseqが終了後、de novoアセンブリ、ヒト及びマウスの遺伝子データベースを用いたアノテーションを行い、得られたデータよりモリアオガエルSMIS相同遺伝子の同定を行う。SMIS遺伝子KOモリアオガエルの作成は体内受精様式の成立におけるSMISの役割の検証を目的として計画されたものである。研究期間内でのSMIS遺伝子KOモリアオガエルの作成は難しいが、モリアオガエルと同様に体外受精を行う有尾両生類のトウホクサンショウウオ、及びアカハライモリと同様に体内受精を行う有尾両生類のアホロートルのSMIS相同遺伝子を同定、塩基配列の比較、解析を行うことにより、体内受精様式の成立に必要なSMIS遺伝子構造の特徴を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、商業サービスを用いて3サンプルのRNseqを行っている。サービスの依頼及びサンプルの送付はH28年度中に行っているが、結果が得られるまでには数カ月かかることから解析終了までに年度をまたいでしまい、H29年度に支払いを行う必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
モリアオガエル輸卵管RNAseq、トウホクサンショウウオ輸卵管RNAseq、アホロートル輸卵管RNAseqに用いる。
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