研究実績の概要 |
種々の病原体の中には、ヒト特異的に感染し、病原性を発現する病原体が存在する。ヒト特異的病原体の代表例として、エイズの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)が挙げられる。抗HIV-1薬多剤併用療法の確立により、HIV-1感染症の治療成績は格段に改善した。しかしながら、根治療法はいまだに確立されておらず、より効果的な新規治療法が求められている。これまで根治療法が確立できなかった一因として、HIV-1の病原性がヒトに限られており、HIV-1感染病態を生体内で忠実に再現できる動物モデルが存在しなかったことが挙げられる。 本研究では、特にアフリカで局所流行に留まっているHIV-1 group N、および、チンパンジーのウイルスsimian immunodeficiency virus (SIVcpz)を「現在進行形でヒトへの適応進化を遂げようとしている新興感染症ウイルス」と捉え、申請者の作製したヒト化マウスモデルを用いた感染実験を実施した。この主軸となる研究はおおむね順調に現在進行中である。学術的・医学的に有意義な結果が得られており、国内外の諸学会(Cold Spring Harbor meeting, New York, 2016)および招待講演(第15回淡路島感染症フォーラム, 淡路島, 2016)で発表を行った。さらに、本研究から派生した研究成果を、8報の国際学術論文(すべて査読有, うち5報の責任著者)にまとめ、発表した。
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