研究課題
脊椎動物の性決定遺伝子は一つに固定されたものではなく、種あるいは集団ごとに別の遺伝子と入れ替わる現象が知られるようになった。これを性決定遺伝子あるいは性染色体のターンオーバーと呼ぶ。その中に、XX/XY型とZZ/ZW型性決定機構の相互変換も含まれる。我が国に生息するツチガエルは地域集団によって性決定機構が異なり、両方のタイプが存在する。両タイプの性染色体はお互い相同であり、その上にあるSOX3遺伝子が、XY型ではオス決定、ZW型ではメス決定を行っている可能性が高い。本研究ではその使い分けを可能にする遺伝子発現制御の分子機構を明らかにする。平成27年度は次の結果を得た。1.XY型とZW型集団におけるSOX3遺伝子発現細胞これまでの研究において、ZWメスの未分化生殖腺においてSOX3タンパク質は中腎細胞に局在し、未分化生殖腺の中央部(髄部)への移動を示唆する結果を得ている。これまでに報告がない新規の発現パターンであり、メス決定との深い関連性が推測される。今回、XY集団において、抗SOX3抗体による免疫染色を行い調べたところ、XX雌(13日以降の幼生)においてもZW雌と同様、生殖腺の髄部に陽性細胞を確認し、とくに髄質部と皮質部の境界に陽性細胞が位置していた。一方、XY雄の生殖腺ではいずれのステージにおいても明確なシグナルを観察できなかった。なお、GFPのノックインによる発現解析はまだ導入が成功できていない。2.XY型とZW型集団における常染色体と性染色体のメチル化DNAメチルシトシン(5mC)およびその酸化産物であるDNAヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に特異的な抗体を用いて、XX, XYおよびZZ,ZW細胞の染色体で免疫染色を行い、シトシンのメチル化パターンの比較を行った。その結果、両タイプにおいて、常染色体と性染色体の間、ないしZ,W、X,Y性染色体それぞれの間に染色パターンの違いを見いだすことはできなかった。
2: おおむね順調に進展している
DNAメチル化の解析を本年度に入れたため、発現解析が予定のすべてを実施できていないが、これに関しては継続して行う。
SOX3遺伝子の発現解析は平成28年度も続ける。とくにノックインはまだ容易な手法ではないので、最終年度まで続けて行う予定である。なお、本技術に関しては当施設に両生類で成功している研究者がいるので、随時アドバイスを受けていく。平成28年度の実験は予定通りに実施する。
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