研究課題/領域番号 |
15K07167
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
三浦 郁夫 広島大学, 両生類研究センター, 准教授 (10173973)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 性決定機構 |
研究実績の概要 |
我が国に生息するツチガエルは地域集団によって性決定機構が異なり、XX-XY型とZZ=ZW型のタイプが存在する。両タイプの性染色体はお互い相同であり、同じ染色体上にあるSOX3遺伝子が、XY型ではオス決定、ZW型ではメス決定を行っている可能性が高い。本研究ではその使い分けを可能にする遺伝子発現制御の分子機構を明らかにする。平成28年度は次の結果を得た。 1. ノックインによるSOX3遺伝子の発現解析 ツチガエルの性染色体上にあるSox3遺伝子内にEGFP断片を導入し、ゲノム内で融合遺伝子を作成することでSox3遺伝子の発現細胞を検出する実験を行った。28年度は導入DNA断片を一本鎖の状態でCrispr/Cas9と同時導入する手法を用いて、EGFP遺伝子をツチガエルのSOX3内に導入する実験を行った。EGFPのコード領域(714塩基)とその両端にsox3遺伝子配列(60塩基と58塩基)を含む836塩基を合成し、その一本鎖をCrispra/Cas9と共導入することで、Sox3の終止コドンの直前への導入を試みた。その結果、2種類の導入結果が得られた。一つは、計画通り、終止コドン直前に断片が組み込まれた。ただし、EGFPは285塩基と短く、半分ほどの領域が欠失していた。また、sox3の3‘側のTAA下流には7塩基の重複が生じていた。もう一つは、終止コドンのTを含み上流の393塩基を欠失していた。いずれもほぼ予定領域の切断が生じたが、個体は幼生期途中で発生が停止し、課題が残った。 2.XZ雌雄の作成 XY性染色体とZW性染色体間でSOX3遺伝子の発現の違いに関与すると予想される上流領域のメチル化を調べるため、XZの作成を行った。昨年、作成していたXZのメスにZZのオスを交配し、遺伝子型XZでありながら表現型が雌雄のそれぞれ5匹ずつを作成することができた。以後の解析に用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
28年度はノックインの実験に時間が取られ、sox3遺伝子メチル化の解析ができなかった。一方、XZ雌雄は作成する事ができたので,材料の準備は達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
ノックインについて、29年度には導入断片を環状にして導入するという新手法に加え、in situ hybridizationによる従来の手法も用いることで、XYとZW幼生生殖腺におけるsox3遺伝子の発現細胞の同定を行い、解析結果を得る。また、Sox3遺伝子のメチル化解析については材料がすべて揃ったので29年度に合わせて解析を行う。以上の結果をもとに、SOX3遺伝子発現がXY型とZW型で異なる機構を明らかにする。
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