研究課題
本研究は、爬虫綱カメ目を構成する種から様々な核コードcDNAとミトコンドリアゲノムの塩基配列を決定し、核遺伝子とミトコンドリア遺伝子の分子進化特性を解明することを目的とする。本年度は、カメ類ミトコンドリアゲノムの塩基配列決定を前年度に引き続き行い、一部配列が未完成の種を含め新たに5種のミトゲノム塩基配列を決定した。これらのミトゲノムがコードする37遺伝子は、ヒトミトゲノムと同じく、いわゆる脊椎動物の典型的なミトコンドリアDNA遺伝子配置を取っていたが、ND3やND4Lなどの遺伝子において読み枠にフレームシフトが存在した。カロリナハコガメのRNA-SeqデータをもとにND3のcDNA塩基配列を復元したところ、フレームシフトの存在をcDNA塩基配列中に確認した。従って、このフレームシフトは、RNA編集などによってmRNAレベルで修復されず、翻訳時のフレームシフト機構によって対処されていることが示唆された。今年度はさらに、ニホンイシガメの成体肝臓から、Illumina Miseqを用いてRNA-Seqデータを取得した。151bpのペアエンドデータで計41060588リードの塩基配列が取得され、アセンブルを行うことで99050個のコンティグを得た。我々が作成した相同性検索のツールを用い、この中にシナスッポンと共通する9673個の相同cDNA塩基配列が存在することが分かった。今後は、これらの相同コンティグ配列に対応する遺伝子を同定するとともに、分子進化特性を解明する核遺伝子の絞り込みを行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
カメ類のミトコンドリアDNA塩基配列の決定は概ね予定通り進行している。核コードのcDNA塩基配列に関するデータ取得の系も確立し、ニホンイシガメなどを用いてデータ取得が開始できている。
今後は、核コードのcDNA塩基配列に関するデータ取得を継続するとともに、インフォマティクスを用いた相同cDNA塩基配列の絞り込みを行う。また、ミトコンドリア遺伝子と核遺伝子で分子進化特性を比較する手法について検討を行っていきたい。
今年度実施予定であった次世代シーケンサーのランを翌年度に回したため、約20万円の次年度使用額が生じた。
この実験は次年度7月頃に実施する予定であり、総合的に見れば研究計画に大きな変更は生じない。
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