研究課題
毛色関連遺伝子のMc1rおよびAsipに着目し、その進化的動態を解析したところ以下に記す成果を得ることができた。(1)日本産ハツカネズミの起源の解明:核の変異の解析において、200 kb, 1 Mb, 5 Mbの染色体領域にインターバルの異なるマーカーを設置し、ハプロタイプ構造解析を行った。北海道および東北産のゲノムの主体は北ユーラシア亜種系統(MuS)であり、平均170kbの南アジア亜種系統(CAS)の断片が挿入されていた。北日本においては数百世代前に交雑が始まったことが示唆された。これにより、約2000年前にMUSが九州に移入後、関東以南に定着後、北日本への展開は一定時間(1000年程度)を経て進出したことが示唆された。(2)黒目白毛個体の責任変異の解明:北海道で採取されたエゾヤチネズミの全身白化(黒目)個体において責任変異の探索を行ったところKit遺伝子の1塩基置換が原因である可能性が示唆された。(3)リボソームRNA遺伝子の進化的動態と系統地理学的マーカーとしての活用:ハツカネズミ5SrRNA遺伝子のコピー数、亜種系統ハプロタイプ間の組換え頻度を調査した結果、ゲノムあたり130-170コピーを持ち、クラスター間の組換えは抑制されていることが判明した。5SrRNA遺伝子は同一クラスター内および同一交配集団内で均一化しており、系統地理学的マーカーとして活用できることが示唆された。(4)逆位反復配列構造の進化的動態把握:哺乳類の毛色関連遺伝子Asipの非コード領域(~150 kb)の構造を9種のゲノム配列を用いて解析した。5対の保守的配列が観察され、ネズミ類では逆位反復配列として存在した。一方、ヒト等では片方の配列の保守性が失われていることが観察された。小型哺乳類では種を越えて維持される配列と小型哺乳類で観察される逆位反復配列は機能的に重要な役割を持つ可能性が示唆された。
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Data in Brief
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