本研究では、シャジクモにおいて独自に確立した培養株と概要ゲノムを基礎とし、さらにシャジクモ藻類の発生段階/器官/細胞毎の発生遺伝子の発現パターンを網羅的に抽出し、どの遺伝子が各発生段階/器官/細胞に特異的に発現するのかを解明する。また、シャジクモ藻類の発生遺伝子の機能解析に向けた実験系の確立を進め、標的遺伝子がシャジクモ藻類においてどのような役割を果たしているのかを解明する。 平成29年度は、前年度までに得られたシャジクモの次世代シーケンサー(Illumina)を用いたRNA-seqデータに基づき11種の発生段階/器官の発現変動遺伝子を比較した結果、生殖器官形成過程で多くの遺伝子の発現変動が見られ、特に雄性生殖器官と接合子で発現変動遺伝子数が多いことが明らかになった。国内外の研究機関との共同研究を実施し、シャジクモの生殖器官形成過程と接合子に特異的な発現パターンを持つ遺伝子について陸上植物、シャジクモ藻類、緑藻類の配列を用いて分子系統解析を実施し、シャジクモの配列の系統的位置づけを明らかにした。また、これらの遺伝子についてリアルタイムPCR法、in situ ハイブリダイゼーション法等により発現解析を行い、遺伝子の進化過程について解析を進めた。さらに前年度までに作製したシャジクモのネイティブな遺伝子プロモーターを用いた外来遺伝子を発現させるコンストラクトを用い、シャジクモにおけるマイクロインジェクション法、パーティクル・ボンバードメント法等を用いた一過的な遺伝子導入系の検討を進めた。オーストラリアシャジクモ、クレブソルミディウムについてもRNA-seqデータに基づき遺伝子発現量の定量を進めた。
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