これまでの5年間でツノゼミ亜科Centrotinaeの採集調査を第一に海外調査に力を入れて進めてきた。 もっとも遂行が困難であり、多くの固有種が生息するカリブ海の島での調査に関して、共同研究者を探すことの困難さ、調査許可取得の困難さから、なかなか調査自体ができなかったため、研究の延期を余儀なくされていた。今回、現地研究者の協力により、ドミニカ共和国(エスパニョル島)の政府より正式に調査許可を得て、同地を訪れることができ、カリブ海の島々に固有な2族(MonobeliniとNessorhinini)に属するツノゼミをようやく採集することができた。多数の種の記録があるが、過去の産地は開発によって消失しており、合計3種が得られたのみであるが、非常に重要な成果といえる。 これまでDNA抽出からPCR、シーケンスをさまざまなツノゼミに関して実施してきたが、これらの族のツノゼミの材料がなかったために解析まで進めることができなかった。これらカリブ海固有の族のツノゼミは、遠く離れたアジアのツノゼミと形態的に類縁性が認められるが、その系統的位置は明らかにはなっておらず、この材料によって、ツノゼミ亜科全体の進化が明らかになるものと期待できる。 今後、世界各地のツノゼミ亜科の主要な属の系統解析を進め、それをもとに形態進化や亜社会性の進化を議論し、系統関係に裏付けられた体系を築くことを目標として、分類学的な研究も進めたいと考えている。
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