研究課題
これまでの研究により、三方五湖に生育するスジアオノリは、塩濃度環境が異なる水域間でhsp90遺伝子型の遺伝子頻度が明確に異なっていること、遺伝子型にかかわらず、上流域(塩濃度は3psu以下)で採集される藻体は生殖細胞が正の走光性を示し、下流域(塩濃度は0psuから30psuまで大きく変動)で採集される藻体は負の走光性を示す傾向があることが明らかとなった。今年度は、水域間で見られる遺伝子頻度の違いが生殖細胞の分散能力や走光性の違いと関連しているのかを明らかにするため、三方五湖の上流域と下流域に3日間連続でスライドガラスを設置・回収し、そこに付着した生殖細胞の遺伝子型を調べ、各水域の各遺伝子型の供給の有無を調べた。その結果、下流域において、88サンプルの遺伝子型を特定でき、藻体が検出されていたB0/C0型・B6/C0型が78.4%を占めたが、上流域でしか検出されていない遺伝子型(A0/B0型・B0/B7型・B0/E0型)が20.5%検出されていたことから、上流域に特有の遺伝子型の生殖細胞も下流域まで拡散してくることが明らかとなった。下流域において、母藻の解析では全く検出されなかった遺伝子型が生殖細胞の解析で検出されたことから、生殖細胞が着底後、成体に成長する過程で淘汰されている可能性が示唆された。スジアオノリ種内で遺伝子型間の成長特性が分化し、各水域の塩濃度環境に合った個体が生き残り、遺伝子型組成の違いが生じている可能性が高いと考えられる。
3: やや遅れている
今年度は、本研究をサポートしてきた大学院生の中途退学、申請者の異動等が重なり、計画通りサンプリングを施行できなかったため。
これまで三方五湖を主たるフィールドにして研究を展開してきたが、申請者の異動によりこれまでの調査が困難になったため、今後はスジアオノリの遺伝的多様性が期待される新たな汽水環境を探索するとともに、太平洋側と日本海側のアオノリ間で保水力や乾燥耐性を比較し、生理生態的な分化を明らかにする予定である。
研究をサポートしてきた大学院生の中途退学や申請者の異動などにより、計画していたサンプリングや解析が充分に行えなかったため
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