研究課題/領域番号 |
15K07197
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
出井 雅彦 文教大学, 教育学部, 教授 (60143624)
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研究分担者 |
長田 敬五 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (10147829)
佐藤 晋也 福井県立大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80709163)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 珪藻 / Hydrosera / 新奇構造体 / 遺伝子 / 殻形成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Hydrosera珪藻にみつけた新奇構造体の形態及びその形成過程を明らかにすること、そして新奇構造体の形成に関わる遺伝子を探求することである。研究初年度の計画は、①材料の採集と株の確立 ②光学顕微鏡による細胞分裂の観察 ③走査電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡による新奇構造体の微細構造体の観察 ④海外研究協力者の招聘と研究打合せ、であった。 ①については、沖縄県西表島、石垣島から材料を採集し、新たな株を分離に成功した。 ②については、連続観察に必要な倒立顕微鏡が予算的に準備出来なかったこともあり、十分な成果にはつながっていないが、新年度は別の方法で観察する準備をすすめている。 ③につては、走査電子顕微鏡及び透過電子顕微鏡による新奇構造体の観察に成功し、新たな事実を発見た。その中でも特筆すべきは、多数の新奇構造体が、細胞膜直下でシリカレンマ様の膜の中で形成されることを、細胞切片像の観察によって初めて明らかにしたことである。また、それらが細胞内の各所で同時多発的に作られることも明らかになった。それぞれの新奇構造体は、最初は数マイクロメーターの小さなリング状構造であるが、そこを起点に放射状に広がるように成長し、数十マイクロメーターの円盤状構造物になることが明らかになった。 ④については、これまでにいくつもの共同研究をしているイギリスエジンバラ王立植物園のDavid G. Mann博士を招聘した。講演会を行って頂くと共に、今後の研究について議論し、有益な示唆を頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画に上げた4つの項目のうち3項目については、計画通りまたはそれ以上の成果を上げている。1項目については、観察機器が不十分であったため、目標達成とはいかなかったが、改善策を準備しており、今年度中には不足分を埋め、目標とする成果が十分得られる見通しはついている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、材料の採集と採集品からのHydrosera株の分離を行う。新奇構造体が細胞内でどのように作られるかを、生細胞の光学顕微鏡観察、そして超薄切片像の透過電子顕微鏡観察から明らかにする。また、今年度より、新奇構造体形成に関わる遺伝子の探索を開始する。新奇構造体を作るHydroseraと近縁ではあるが新奇構造体を作らないTerpsinoeを使い、それぞれの細胞で働いているmRNAを、次世代シークエンサーを使い網羅的に解析、比較し、新奇構造体形成に関与する遺伝子を探索、特定してく予定である。また、今年度途中までに得られた成果を、カナダで行われる第24回国際珪藻シンポジウムで発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時点で購入を予定していた機器備品(顕微鏡用デジタルカメラ)を、同性能でより低価格の機種に変更し購入したために生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
この次年度使用額は、光学顕微鏡による生細胞の連続観察に必要な、水浸レンズの購入に充てる予定である。
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