研究実績の概要 |
①Hydrosera triquetra var. triquetra および H. triquetra var. hexagona の殻形成について,蛍光顕微鏡と透過電子顕微鏡を用い,その発達過程を観察した。殻形成が中心類珪藻で従来から知られているような細胞の中心から始まるのか,それても外側に近い部位から始まるのかを確認することが目的であった。従来の様式とは異なり,外側から始まる可能性を示唆する観察が得られたが,決定的事実の解明には至っていない。 ②H. triquetra var. triquetra 33-06株およびH. triquetra var. hexagona AH-10株の全ゲノム及びトランスクリプトームを得、その比較解析を進めた。現在までに葉緑体およびミトコンドリアゲノムの全長配列を決定することができ、それらのサイズは33-06株とAH-10株でほぼ同一であった(ミトコンドリアゲノムはそれぞれ71,749塩基対と72,177塩基対、葉緑体ゲノムは両株とも123,004塩基対)。これらの株間における配列相同性は非常に高く、両株が形態や分類学的な扱いは異なっているものの、ゲノムの類似度という観点からみると同種として扱うべきであることを示唆している。核ゲノムは33-06株とAH-10株でそれぞれトータルサイズ26.2 Mb、と18.0 Mb、スキャフォールドは688本と257本であった。また核ゲノム中に、他の珪藻には見出されないが両株間では保存されている領域を見出した(それぞれ2.3 Mb、1.7 Mb)。ただし、それらの相同性は相互ブラストベストヒットにより確認されたものの、保存性の低い領域も点在しており、トランスクリプトームのマッピング率も低かった。現在、本領域を対象とし遺伝子予測や配列解析を進めている。
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