研究課題
日本を含む北太平洋では400万年前のベーリング海峡形成後、北極海から太平洋へ好冷性海洋生物が初めて移入し、北西太平洋で生物種メンバーが急変したと推測され、好冷性生物群の初期相が形成された重要な時期である。しかし日本の海洋生物でこの時期と前後について科・属内の分類群レベルで種数変遷や種の交代、種間の系統関係を詳しく論じた研究はほとんどない。そこで本研究は2000万年前以降の地層が露出し、今も多くの種が棲む日本と周辺において貝形虫類2科の好冷性種について、現在の好適な生息環境条件、誕生から繁栄までの歴史、それらが起きた主な場所、多様化のきっかけになった海洋環境変動、種間の系統上の近縁関係を読み取ることを目的とし、北西太平洋縁の新生代の好冷性生物の初期相と、分類学的多様性変遷史の解明を目指している。本研究は3年間を通して「化石の初出年代・生息環境の解明」と「ポア(毛細管)数解析法による種間の系統上の近縁関係の検討」を解析した。その結果、1科の1属に関して、北部太平洋における多様性変遷史の一部を議論できるデータを得た。今後は国内外の学会・学術雑誌でデータを公表していく予定である。これらの研究の途上で、富山県の約1700万年前の地層からCytherella属を含む日本海最古の漸深海生貝形虫化石群を初めて発見した。この化石群について、太平洋を含む当時の日本沿岸の漸深海生貝形虫化石群と属構成を比較・検討し、2000万年前以降の日本海拡大イベント史における海洋生物地理学的意義を初めて議論した。同地域の地層から約1600万年前の浅海生貝形虫化石群も発見し、当時の日本沿岸の浅海生貝形虫化石群と属構成を比較・検討した。これらの解析から、日本海拡大進行時および拡大イベント後の浅海環境変動史と、この化石群の持つ海洋生物地理学的意義を議論した。これらの成果について、学術雑誌に論文として公表した
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Diatom
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日本大学生物資源科学部博物館報
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