平成29年度は当初の計画に従い、八重山諸島において化石探索を行った。また前年度に宮古諸島において確認した化石含有層について、適切な手続きを経て発掘を実施した。さらに、国内の博物館に収蔵されている沖縄諸島と宮古諸島の後期更新世の化石のうち、カメ類、ヘビ類およびトカゲ類の分類学的帰属と系統学的位置づけについての検討と、インドネシア科学院(LIPI)に収蔵されている現生陸生脊椎動物についての比較データの収集を行った。 宮古諸島における発掘では、カメ類や齧歯類などの化石が得られた。これらのうち、少なくともカメ類は宮古諸島より知られている2種(オオヤマリクガメとミヤコイシガメ、ともに絶滅種)とは異なると考えられた。博物館収蔵化石についての検討では、いくつかの新知見が得られた。中琉球の奄美諸島と沖縄諸島および南琉球の宮古諸島と八重山諸島より広く知られているリクガメ科の絶滅種オオヤマリクガメは、インド、バングラディシュ、インドシナ半島西部、マレー半島、スマトラおよびボルネオに現生分布するムツアシガメに近縁であり、また同種と考えられている化石が沖縄島の下部更新統より報告されていることなどから、南琉球からの本種の産出は、中琉球からの漂流分散による可能性が示唆された。また、沖縄島南部の港川人遺跡より、この地域で従来から知られている3種のカメ類(オオヤマリクガメ、リュウキュウヤマガメ、セマルハコガメ属の一種)に加え、これらとは異なるイシガメ科の一種が新たに検出された。このイシガメ科の一種は、久米島の同時代の堆積物より知られているものとは異なっていた。これらの結果は、リュウキュウヤマガメ(沖縄島北部、渡嘉敷島、久米島に分布)がかつて沖縄島とその属島に広く分布していたことを裏付けるだけでなく、当時の沖縄諸島に5種のカメ類が分布していたが、更新世末期以降に一種を残し絶滅したことを示している。
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