研究課題/領域番号 |
15K07207
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
田中 伸幸 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40393433)
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研究分担者 |
松野 倫代 公益財団法人高知県牧野記念財団, その他部局等, 研究員 (30574909)
内山 寛 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (40232871)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ショウガ科 / ショウガ属 / 種多様性 / 記載 / 分子系統 / 成分 |
研究実績の概要 |
ショウガ科は、分類の極めて遅れている単子葉類のグループで、特にその種多様性の中心と考えられている東南アジア大陸部において、フロラ調査が進んでいない地域は依然としてその種多様性に関する知見の空白地帯である。本研究では、その最たる地域の一つであるミャンマーから先行研究で収集された資(試)料や新たな現地調査に基づき、形態、成分、分子の多面的解析により種の多様性を明らかにすることを目的にしている。先行研究により収集した研究資(試)料の栽培を行いつつ、平成28年度は、天然資源・環境保全省森林研究所と共同研究で新たにインドシナ区系とインド区系の植物地理学的境界にあたるミャンマーのチンドウィン川上流域における追加現地調査をショウガ属の開花期である雨季に実施した。開花個体の形態学的解析、DNAによる分子系統解析、HPLCによる成分分析を行った。 その結果、これまでこのタイプの花序をもつ同属種は主にベトナム、タイなどからしか知られていなかったショウガ属の花序が頂生する新種が新たに明らかになった。HPLCによる成分分析により、A:Z. officinale群、B: Z. montanum群、C: Z. barbatum群、D: Z. zerumbet群、E: Z. longiligulatum群の成分的に4つのグループができることが明らかになった。これらは形態的なまとまりとも矛盾は見られなかったが、伝統的な節の分類とは合致していなかった。一方、ITS領域の分子系統解析でもZingiber節とDymczewiczia節の2節は、系統的に区別できないことが推定された。さらにショウガ属の研究の過程で現地調査により明らかになったHedychium属の新分類群の発表およびミャンマーにおけるBoesenbergia属の2種の新産種を報告し、同国のBoesenbergia8種を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然資源・環境保全省森林研究所との共同研究協定を締結できた。そのため、これまでほとんど調査がされていなかったインド区系に近い地域でショウガ属の調査を雨季に実施でき、さらにサンプリングが可能となった。このことで新たに新種が明らかになった。一方で栽培試料の中でなかなか開花しない個体があり、同定や解析が進まなかった試料が多数あった。そこで、開花期に追加現地調査を行うことで生殖器官のサンプリングの数を増やし、かつ実験圃場での栽培を薬剤などを用いて開花促進の方向で進める。また、新種を含めて成分解析用に未解析種の根茎を増殖する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで明らかになっているミャンマー産のショウガ属37種のうち、できる限り多くの種の分子、成分の解析を行っていく方針である。そのためには、いくつかの課題がある。ひとつは、ショウガ属の種の中にはダイレクトシークエンスで配列が読めないものが多く、解析数に制限が出ていることであるが、これについては今後の分子系統解析ではプライマーの設計を含めた検討を行いたい。また、成分解析用には乾物重で50gの根茎が必要であるが、生重では300gが必要なため、現地でのサンプリングの他、成分分析用の栽培による増殖の推進を図る必要がある。これらの策を講じながら、今後は、サンプリング数を多くし、特に形態以外での節の分類について、成分と分子の両面で解析する。また、昨年度十分に調査できなかった染色体の観察も行う予定である。それぞれの分類群の学名の適用について、タイプ標本の調査を次年度より開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
栽培している植物試料の生育の状態から染色体の観察ができなかったことなどによる試薬類の経費支出減や次年度に必要と予想されるタイプ標本調査に充当できるように汎用性のある物品について他の研究費で支出を賄ったことなどにより予算残が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ミャンマーにおける現地調査を実施することで旅費がかかると予想されるため、次年度に必要になると予想されるヨーロッパでのタイプを中心とする標本調査の旅費の不足予想分に充当する計画である。
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