研究実績の概要 |
ショウガ科は、分類の極めて遅れている単子葉類のグループで、特にその種多様性の中心と考えられている東南アジア大陸部において、調査が進んでいない地域は依然として知見の空白地帯である。本研究では、その最たる地域の一つであるミャンマーから先行研究で収集された資(試)料や新たな現地調査に基づき、形態、成分、分子の多面的解析により種の多様性を明らかにすることを目的として、開花個体の形態学的解析、分子系統解析、HPLCによる成分分析を行った。平成30年度は、栽培開花個体の形態調査および追加現地調査により、これまで20種が知られていたショウガ属で平成30年度は新たに2種の新種が明らかとなり、さらにミャンマーより新たにZingiber bradleyanum Craib, Z. chrysanthum Roscoe, Z. densissimum S.Q.Tong & Y.M.Xia, Z. mekongense Gagnep., Z. ottensii Valeton, Z. parishii Hook.f. subsp. phuphanense Triboun & K. Larsen, Z. tenuiscapus Triboun & K.Larsenの7種のショウガ属が発見された。同国のショウガ属の種多様性は、本研究により少なくとも計35種が知られることとなった。さらに研究の過程でウコン属の新種も明らかとなり、記載した。新種を含めたショウガ属の系統解析の結果、ミャンマーのショウガ属は大きく3つのグループに分けることができると考えられた。花序を根出して直立した花柄に付けるZingiber節に属する種と、花序を根出して平伏した花柄に付けるCryptanthium節に属する種は、それぞれおおむね単系統群を形成したが、花序を葉が付いた茎に頂生するDymczewiczia節に属する種は多系統的であった。一方、クロマトグラムでは5つのグループに大別することができたが、系統解析の結果と同じく、従来の節の分類とは一致しなかったことから従来の節の分類体系も見直すことが必要であると考えられる。
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