前年度までに取得した1388recordのSNPのうちヘテロ接合度が特に高く正の選択が生じている可能性のある座位について、近縁種であるMelitaea cinxiaのドラフトゲノムと比較して、機能的遺伝子の有無を調査した。その結果、変異性の高い座位が存在するタンパク質のコード領域が数か所、確認された。これらのタンパク質はヒョウモンモドキ個体群で生じたボトルネックにおいて変異性が維持される選択が生じた可能性が考えられる。属内で保存的な遺伝マーカーをSNPを検出する別な方法として、鱗翅目3科5種のゲノムデータから保存性が高い繰り返し配列を探索し、プライマーを作成して多型性を調べた。その結果、ヒョウモンモドキで利用できる変異性が高いマーカーが得られた。 本研究で開発したSNP等の遺伝マーカーは、今後、飼育繁殖個体の再導入などで予想されるヒョウモンモドキ個体群の遺伝的多様性の変化をモニタリングするために活用されることが期待される。一方、本研究で当初の目標とした2002~2004年の過去サンプルについては保存状態が悪いため、次世代シーケンサーで網羅的解析を行うために必要となる良質なDNAを得ることができなかった。今後は、LAMP法など別の手法で解析を進めることを計画している。
|