研究課題/領域番号 |
15K07213
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 亮 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (90418781)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 種多様性 / 遺伝的多様性 / 安定性 / 温暖化 / 生産性 |
研究実績の概要 |
研究目的:種多様性や種内の遺伝的多様性が高い植物群落ほど、温暖化に対し安定性を示すかを検証した。そのために、野外栽培実験により、種多様性(実験1)と種内の遺伝的多様性(実験2)の2つのレベルでの多様性の持つ安定性効果を解析した。実験1では、同所的に生育する草原性草本4種(ススキ、ヨモギ、イタドリ、コウゾリナ)を用いて、1種のみと4種混植の栽培条件をつくり、それぞれ温暖化環境(ビニールハウス内)と非温暖化環境下(対照)で栽培して、群落の生産性や安定性を比較した。実験2は継続して測定を行なった。 研究実績:27年度に実施した実験1について、本年度は統計解析と結果のまとめを行なった。その結果、地上部、地下部、全体の平均バイオマスはいずれも4種条件の方が1種条件より、温暖化・対照どちらの環境でも大きかった。また、統計的に有意ではないものの安定性も4種条件の方が高かった。また、実験処理に対する種特異的反応がみられ、どの種も非温暖化環境(対照)の方が温暖化環境よりバイオマスが高い傾向があり、コウゾリナを除く3種では1種栽培条件の方でよりバイオマスが大きかった。これらの結果は、多様性-生産性関係と多様性-安定性関係は、どちらも温暖化環境でも正の関係を維持することがわかった。また、以上の成果を、日本生態学会において口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験1の成果は、現在論文にまとめている最中であるが、学会発表を行なうなど、今後も積極的に成果発表を予定している。実験2は継続測定をして移植個体の生存、成長、繁殖に関するデータを得た。実験2も終了し、今後はデータを解析して結果をまとめ、学会発表や論文を通して成果発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験1、2ともデータを取り終えて実験は終了した。今後は、以下の3つの課題について順次論文化を進めていく。 課題1:種多様性の温暖化に対する安定性効果。種数が多いほど温暖化装置内外での生産性(バイオマス)の差が小さいと予測した。結果は、予測どおりであった。 課題2:種内の遺伝的多様性の温暖化に対する安定性効果。遺伝的多様性が高いほど温暖化装置内外での生産性(バイオマス)の差が小さいと予測した。結果は、必ずしも予測どおりではなかった。 課題3:標高の異なる集団での温暖化耐性の違い。高標高由来の集団の方が温暖化に対する耐性が低いと予想した。まだ、解析を行っている段階で、結果が得られていない。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助員を12ヶ月雇用する予定であったが、急遽退職となり雇用を中断したため人件費が予定額より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度は、所属機関が変わることもあり新たな実験は計画しておらず、得られたデータの論文化を目指す。予算は、論文の英文校閲費、掲載料、文献収集費、学会参加費、などに充てる。
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