研究目的:種多様性や種内の遺伝的多様性が高い植物群落ほど、気候変動に対し安定性を示すかを検証した。そのために、野外栽培実験により、種多様性(実験 1)と種内の遺伝的多様性(実験2)の2つのレベルでの多様性の持つ安定性効果を解析した。 実験1では、 同所的に生育する草原性草本4種(ススキ、ヨモギ、イタドリ、コウゾリナ)を用いて、1種のみと4種混植の栽培条件をつくり、それぞれ気候改変環境(ビニールハウス内)と自然環境下(対照)で栽培して、 群落の生産性や安定性を比較した。実験2は多様な標高環境に生育するミヤマハタザオを対象に、標高の異なる8集団を用いて、1集団のみと8集団混植の栽培 条件をつくり、実験1同様に2つの気候環境下で栽培した。 研究実績:最終年度は、実験1の成果の論文発表を目指した。論文を国際学術誌に投稿し、査読者からのコメントをもとに修正を加えた。指摘された点は、データ解析に用いた統計手法の改良、考察等の修正などがある。特に、当初目的とした温暖化処理が、予想より温暖化効果がないことがわかり、この点の問題点を指摘された。そのため、気温のデータに加え土壌温度のデータを追加し、実験区内の環境が温暖化している証拠を提示した。また、温度の上昇とともに、乾燥化している点も考察し、実験区内は多面的に環境が変化している点を強調し論文を修正した。現在、修正原稿を再投稿中である。 実験2については、実験1と同様な論点から論文をまとめる予定にある。 これらの論文作成のため、共同研究者と直接またはメール等により度々議論を行った。
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