本研究では,水生植物ヒルムシロ科の自然雑種オオササエビモにおいて,生態的特性において母系効果を生じる分子的基盤として,光合成遺伝子について着目し,その塩基配列や遺伝子発現の解析を行い,本雑種に特有の遺伝子発現パターンを明らかにした.また琵琶湖の異なる個体群に生育しているオオササエビモの解析から,この特有の遺伝子発現パターンには変異が認められないことを明らかにした.これらの結果から,オオササエビモは葉緑体と核の相互作用が確立する以前の起源が比較的新しい雑種であること,さらに母系が異なる雑種では,葉緑体と核間の適合性の程度が異なる可能性が示唆された.
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