研究課題/領域番号 |
15K07223
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上野 高敏 九州大学, 農学研究院, 准教授 (60294906)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 外来種 / 捕食者 / 社会性ハチ類 / 生態系 |
研究実績の概要 |
前年に引き続き、対馬と韓国におけるツマアカスズメバチの発生状況を調査した。その結果、対馬においては調査地の大部分でツマアカスズメバチの個体数は減少していた。また個体数の減少と相まって、対馬南部への分布拡大も確認できなかった。それらの理由として環境省による駆除事業の効果が考えられたが、結論を出すには次年度も同様の調査を繰り返す必要がある。一方、ツマアカスズメバチが減少したにもかかわらず、ニホンミツバチが減少した地域が多く、ミツバチの減少がツマアカスズメバチの発生状況とリンクしていないことが確認できた。 冬期における野外調査により、ツマアカスズメバチ女王が他のスズメバチ同様に自然林内(ただし二次林)の朽ちた切り株や倒木内、あるいは植林地周辺に放棄され時間が経過した廃材内で越冬していることを初めて確認した。さらに1箇所に複数個体がまとまって越冬している事例も1例であるが確認した。これらの結果から、越冬場所を求めていたツマアカスズメバチ新女王が廃材や木材の隙間などに潜り込んで、それが日本などへと持ち込まれる可能性が示唆された。 海外における調査により、韓国や台湾産のツマアカスズメバチは対馬に侵入したツマアカスズメバチと同様な環境に見られ、温暖な地域の比較的開発が進んだ環境や二次林などに多産するのに対して、インドネシアではむしろ標高が高めでむしろ気温が低い場所の方が多いことが判明した。ツマアカスズメバチはアジアに広く分布するが地域により生息環境の選好性が異なる可能性がある。日本や韓国に侵入した個体群はアジア南部の温暖な地域を好むタイプなのかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に今年度の成果で重要な点は、不明であった越冬生態の一部を解明できたことである。なぜなら越冬中の女王蜂が貨物や船便に紛れ込み、原産地から世界各地へ運ばれたと予想されてはいるが、具体的にどのような環境で越冬するかが確定していなかったからであり、越冬生態を明らかにすることでツマアカスズメバチのさらなる侵入域の拡大を防止する方策を立てることに貢献するからである。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も引き続き、対馬における野外調査を実施する。また越冬生態についての調査も行う。ツマアカスズメバチとニホンミツバチとの関係をさらに明らかにするため、養蜂家への聞き取り調査(ミツバチの減少率を推定するため)も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
4月から5月の春季に野外調査を実施する予定であるが、そのための旅費として確保したものである。
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次年度使用額の使用計画 |
4月(4/21-4/27)に原産地国における野外調査を実施する。
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