ツマアカスズメバチは、我が国では2012年に最初の個体が対馬にて発見、2013年に定着確認、2015年にはほぼ対馬全島において確認されるにいたった「特定外来生物」である。平成29年度もツマアカスズメバチの定着・発生状況を確認する継続調査を長崎県対馬にて行った。その結果、2015年の最盛期に比べれば、個体数が少ない状態であったが以前、対馬北部の広い範囲に発生を継続しており、峰町など個体密度の高い地域が認められた。一方、対馬南部への分布拡大と個体数増大はなぜか起こっておらず、これは環境省や対馬市が実施している防除による効果であると判断された。 また、新規に侵入情報があった長崎県壱岐においても緊急の調査を行った。壱岐全域で調査を行った結果、ツマアカスズメバチは北東部の極狭い地域において確認された。ニホンミツバチへの来襲、花や果実への来訪数などを調査した結果、個体数が非常に少なく、まだ侵入のごく初期の段階であると判断された。さらに巣場所を特定するための簡易法を考案し、対馬と壱岐で実施した結果、壱岐において営巣しているツマアカスズメバチの巣は唯1個のみであることが示唆された。またおおよその巣場所を特定することができた(巣は環境省の委託を受けた業者によって予想地点からすこし離れたところから発見された)。さらにツマアカスズメバチの巣を駆除する簡易法についても検討し、土着のコガタスズメバチやキイロスズメバチを用いた試験を実施したところ、限定的ではあるがその有効性が認められた。
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