研究課題/領域番号 |
15K07227
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大泉 宏 東海大学, 海洋学部, 教授 (30366009)
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研究分担者 |
中原 史生 常磐大学, コミュニティ振興学部, 教授 (10326811)
吉岡 基 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30262992)
三谷 曜子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (40538279)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シャチ / 個体識別 / コールタイプ / 回遊 |
研究実績の概要 |
日本周辺のシャチについては長らく散発的な情報に留まっていたが、最近になって北海道の羅臼や釧路海域でシャチの頻繁な回遊が知られるようになり、一部では観光等にも利用されるようになってきた。しかし、北海道を含む日本周辺におけるシャチの個体群構造や生態は不明であり、個体レベルで情報が整備されているアメリカ、カナダ、ロシアの個体群との関係も明らかではない。日本周辺のシャチは北太平洋周辺では最後に未知のまま残されている。本研究は主に北海道周辺のシャチを対象として、その個体レベルでのカタログ化と群れの鳴音レパートリーのカタログ化を行う。また試験的に衛星標識を装着し、回遊の追跡を行う。これにより管理の単位となる個体群の特定、長期的な個体群動態、行動あるいは社会的特性を明らかにする基盤情報を整備する。北太平洋におけるシャチ個体群の全容解明のためにも日本のシャチについての基礎研究は大変重要である。 2016年度には羅臼海域で5月に7日間、6月から7月に9日間の調査を行った。両期間中ともに多数のシャチの発見があり、個体識別用写真と鳴音データを多く取得できた。5月の調査期間中には計4頭のシャチに衛星標識を装着することに成功した。また、8月にオホーツク海側の網走沖で3日間の調査を行ったが、シャチの発見は無かった。 個体識別作業は2015年までに累積されてきた暫定識別済み写真から羅臼海域で計219頭が個体として登録され、簡易版の識別用カタログが作成された。鳴音分析については2015年と2016年に録音された釧路海域と羅臼海域の計164時間の録音データから計13種のコールタイプが識別され、発見された群れの個体識別結果と併せて分析された。また、衛星標識は延べ225日にわたって位置を追跡でき、最長で約4ヶ月間の回遊ルートを明らかに出来た。 また、2015年までの成果について羅臼町民向け報告会を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
両海域から多数の個体が識別されデータベースに登録されつつあり、鳴音レパートリーにも多数のコールタイプが識別されている。さらに衛星標識は予定数を大きく上回って装着に成功し、平均追跡日数は約2ヶ月間と比較的長期間の追跡に成功している。また、単にデータの取得だけでなく地理的分布の特徴については公表論文、鳴音レパートリーと行動の関係については修士論文としてもまとめられた。その他に群れ構成の特徴や自然標識の視認性に関する検証の研究も進んだ。さらに群れの構成個体の分析についても2015年までの観察記録と個体識別結果から暫定的に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を通して得られるデータから個体識別および鳴音レパートリーのカタログを完成させ、公表する。また群れ構成の分析を完了させる。鳴音レパートリーについても公表論文とする。また外部団体の協力も得て衛星標識による回遊の研究を拡大させる。 次の研究段階への発展に向け、これまで試験的実施に留めてきたバイオプシーサンプルの採取を拡大し、今後不可欠となる遺伝的研究の開始に向け基盤整備に着手する。また、2017年度に行われる国際学会において海外研究者とともにワークショップを開催して情報交換を行う計画であり、今後の研究発展の基礎とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品について見込みよりも少ない調達量で必要量に達したため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の追加に使用予定。
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