本研究では精子速度が精漿や体腔液などの生体由来の成分に影響を受けることを明らかにした。精子運動性能、特に精子遊泳速度が雄の繁殖成功に大きな影響を与える要因として考えられて来た(Gage et al., 2004)。しかし、過去に測定された魚類の精子遊泳速度は河川水または海水などの無機的な溶媒を用いたものが大半であった。体外受精を行う魚類の受精環境では競争雄の精漿や雌の体腔液が多くの場合存在しており、これまで測定されてきた精子速度とは異なる可能性がある。本研究課題は、精漿が雄の繁殖成功に寄与する可能性に着眼している点が独創的であり行動生態学研究に新しい知見をもたらすことが期待される。
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