研究課題
平成27、28年度に29年度の調査結果を加え、岡山平野の淡水ガメの変遷をほぼ明らかにした。岡山平野の225地点でミシシッピアカミミガメ(以下、アカミミ)484個体(26.9%)、クサガメ1267個体(70.5%)、ニホンイシガメ(以下、イシガメ)35個体(1.9%)、ニホンスッポン(以下、スッポン)10個体(0.8%)を捕獲し、現在、岡山ではクサガメが優占していた。様々な文献・資料より1900年頃までは岡山平野においてはイシガメが多かったが、1990年にはクサガメが置換したと考えられる。特に、池のイシガメは減り、岡山平野東部の小河川を中心に残存している状況である。一方、アカミミは河口から川にそって生息範囲を広げている様相が示された。また、一部の池では環境DNAで生息種の推定を試み、実際の捕獲データと比較した。環境DNAで検出される確率は、実際に捕獲される確率よりかなり低く、カメ類の環境DNA調査は採捕調査より感度が低いことが明らかになった。一方、イシガメには遺伝的に異なる2系統が東西に分布することが先行研究で示されているが、イシガメのチトクロムbやD-loop領域の塩基配列を解析したところ、これら2つの系統が混在しており、その境界が複雑であることが明らかになった。また、江戸時代に日本に移入され、現在では優占しているクサガメについて、遺跡から算出する骨から新たな知見が得られた。すなわち、最近の研究ではクサガメの移入は江戸時代とされていたが、高梁市権現山岩陰遺跡等の骨格残骸の14C-AMS年代測定から、本種の中国地方への移入はこれまで想定されていた江戸時代後期よりも古く、中世後期までさかのぼることが示された。これらの結果は、この地におけるカメ類の遷移がイシガメ→クサガメ→アカミミという単純なものではなく、クサガメに似た別種の存在など、新たな概念を構築する必要性を提起した。
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