研究課題/領域番号 |
15K07235
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大石 高生 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (40346036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動物モデル / ニホンザル / 難病 / 早老症 / 自然発症 |
研究実績の概要 |
霊長研で生まれたニホンザルN416は、皮膚の萎縮、幼児期における白内障、大脳皮質と海馬の萎縮、末梢神経伝導速度の低下、糖代謝の異常、ヒアルロン酸代謝の異常、線維芽細胞の増殖速度の低下、DNA 修復能力の低下といったヒトの早老症によく似た表現型を示したが、ウェルナー症候群やロスムンド・トムソン症候群、ハッチンソン・ギルフォード症候群など広義の早老症を含む12 の疾患に関わる22 の遺伝子には異常が見られなかった(Oishi et al., PLOS ONE, 2014)。このニホンザル(3歳)の各種臓器について、早老症様の症状を示さなかった0歳から30歳までのニホンザル28頭とともに元素分析を行った。タンパク質含量の指標となるイオウや核酸含量の指標になるリンは他個体と比べて際立った特徴を示さなかったが、亜鉛に関しては一部の臓器で著しく低い値を示した。亜鉛はDNA修復関連酵素や抗酸化酵素などに関わっているため、その代謝の異常が早老症的症状の発現の一因となっている可能性が示唆された。 ダウン症に類似した低い鼻、舌の突き出し、四肢の固縮、低成長を示すニホンザルMff2389に関しては、血縁個体、非血縁正常個体とともに骨格のエックス線撮影、骨塩測定、尿や血液の生化学分析、行動解析を行った。四肢の骨格の変形、骨塩量の減少、特定物質の異常排泄が観察された。当初疑ったダウン症ではなく、別の難病であるムコ多糖症の疑いが濃い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ニホンザルN416の微量元素分析に関しては、脳以外の組織に関して、当初の予想通りの結論が得られている。脳に関して、元素分析、組織学的検証を行えなかったため、やや遅れていると判定した。 ニホンザルMff2389に関しては、予定している解析をほぼ実施し、一部は予想外の結果を得た。解析の方法を部分的に変更し、28年度の研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
ニホンザルN416に関しては、脳の微量元素分析と組織学的解析を進めるとともに、培養細胞での解析を行う。また、組織含量が少なかった亜鉛に関して、取り込みの異常があったのか、排出の異常があったのかをゲノム、組織学の両面で解析する。 ニホンザルMff2389に関しては、血縁個体を含めて、形態学、行動学的データの解析を継続するとともに、難病の原因遺伝子に関する遺伝子解析を進める。
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