本研究計画は、ハヤト(隼人)の原像とも呼べる南九州地域の古墳時代人集団について、ミトコンドリアDNAの解析を行い、シークエンスデータからハプログループの頻度構成を導き出すことで集団としての分子遺伝学的特性および系譜を明らかにすることを大きな目的として遂行された。方法としては主に2点、一つはSingle PCRによるシークエンスで、D-LoopのHVR1とHVR2領域をターゲットに行われ、もう一つはMultiplex PCR APLP法を用いたミトコンドリアハプログループによる分析で、9組のプライマーからなるMulti-PCRセットを3種類作製し、分析を行った。昨年までの研究よりPCRによってDNAの増幅を認めないサンプルや混入例が相当数みられたことから、本年度は比較的厚く丈夫な骨片を約50体選び、またコンタミネーションの可能性をできるだけ除去して、single および Multiplex PCRを行った。分析の結果、目標の60-80%には大きく及ばなかったものの約20%の解析結果を得ることができた。 南九州古墳人の形態学的特徴は、縄文人と共通する点が多く認められることから、ミトコンドリアDNAの特性も縄文時と類似することを予想していたが、本研究の結果だけでみると、縄文人に多く認められるハプログループM7aやN9bの割合はごく少なく、現代人に多いD4が多いという結果を示した。例数が少ないため割合は偏っている可能性はあるものの、南九州地域の古墳人の遺伝的特性は縄文人とは異なる可能性が高いと考えられる。 その他、古墳人関連の研究として、大分県の木の上古道古墳の病的所見について学術誌に発表した。
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