本研究の目的は、各地方の江戸時代人頭骨を分析し、頭骨形態の身分差や地域差が認められるかを確認し、梅毒症状や人為的損傷にも地域差が認められるかを調査することであった。 各地方の標本ならびに新たに出土した標本(計541個体)を分析し、以下のことが明らかとなった。1)東京都内出土の頭骨形態には身分差が存在することが強く示された、2)地域差は明瞭ではないが、男性では中部地方と東北地方が他地域とは異なる形態を持つ傾向があった、3)地方の武家の頭骨は「武家的特徴」を持つことが確認された、4)地方の頭骨における梅毒症状や刀創はごく一部に認められた。
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