研究実績の概要 |
犯罪捜査で問題となる白骨死体の鑑定では、頭蓋骨と該当者と思料される人物の顔写真との重ね合わせによる個人識別(スーパーインポーズ法)や頭蓋からの顔の復元(復顔法)が行われる。これら検査においては、頭蓋骨と頭部表面の距離や、頭蓋各部位と顔の各部位(眼、鼻、口、耳など)の位置に関する基本データが必要となる。そこで、頭部CT画像を収集して3次元的にこれらを検討し、さらに、3次元的な復顔法の開発を試みた。 計64名(男性42名、女性22名)の被験者から頭部CT画像を得た。ここで、CT撮影は通常の仰向け姿勢に加えて、立位状態での顔貌を得るためにうつぶせで顔を挙げた姿勢で行った。CTデータから得られた頭蓋骨に対して、38点の特徴点を基に40,962頂点からなる相同モデルを作製した。各相同モデルの各頂点と頭部表面との距離を得て、それぞれの平均値を任意の頭蓋の相同モデルに適用して復顔を試みた。また、撮影時の2姿勢間の形状変化を加齢変化とみなし、この変化を復顔像に適用することで擬似的な加齢処理を試みた。 検討の結果、頭蓋と頭部表面形状の相同モデルが各個体から得られたので、それぞれの平均形状を得た。これらは日本人の頭蓋と頭部表面形状の3次元的な位置関係の平均モデルであるため、今後、スーパーインポーズ法で参照する貴重な資料となる。復顔法においては、相同モデルの頂点数を40,962点としたことで、細部にまで至る精細な復顔像が得られた。一方で、各個人の顔には軟部組織厚に強い個体差(個性)があることも示された。2姿勢間の形状変化による擬似加齢化は、以前実施した顔の加齢変化に関する研究で得られた変化と良く類似し、2姿勢間の差分を適用することで違和感のない擬似加齢復顔像が得られた。 本研究により、スーパーインポーズ法と復顔法の信頼性が科学的に向上した。
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