研究課題/領域番号 |
15K07256
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
長岐 清孝 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (70305481)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 半数体 / 動原体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的: 本研究では、「簡便で汎用性のある半数体作出法の確立」を目的とする。「半数体作出とその倍加」による「半数体育種法」は、純系を得る為の時間を大幅に短縮することができる。しかし、これまで半数体は花粉培養や異種交配により作出され、これらの方法を利用できる種はごく僅かであった。そこで、本研究では真核生物に普遍的に存在する動原体タンパク質および動原体DNAをゲノム編集により改変して、その機能を低下させる。続いて、この機能低下した動原体をもつ配偶子と正常な動原体をもつ配偶子を交配することにより、受精胚中で選択的に片親由来の染色体セットを脱落させ、半数体を効率的に作出する。
本年度実施した研究およびその成果: イネおよびトマトにおいて内在性CENH3遺伝子を標的としたmultiplex CRISPR/Cas9コンストラクトを作成した。トマトでは、動原体に局在するGFP融合CENH3、もしくはCENH3のN末をヒストンH3と置換したGFP Tail-swap系統に対して形質転換した。イネでは動原体局在するGFP融合CENH3をもつ系統の作出が遅れていたため、野生型日本晴に対して形質転換し、ゲノム編集が起きるかどうかを調べた。イネでは、得られた形質転換体5系統のうち4系統で設定した2個の標的配列周辺に欠失が起きていた。トマトでは、得られた7系統とその後代を含む41個体を調べたが、ゲノム編集の痕跡はみられなかった。 イネにおいてGFP融合CENH3およびGFP融合Tail-Swap系統を作出し、融合タンパク質の動原体局在を調べた結果、GFP融合CENH3は全ての形質転換体で動原体局在を示したのに対して、GFP融合Tail-Swapは全ての形質転換体で動原体局在を示さなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
どの種においてもGFP融合CENH3をもち、内在性CENH3遺伝子がノックアウトされた系統が得られていないが、イネではmultiplex CRISPR/Cas9系が高効率で働くことが確かめられた。このことから、昨年度得られたGFP融合CENH3に対してmultiplex CRISPR/Cas9系でCENH3ノックアウトが作成可能と考えられる。トマトでは用いたmultiplex CRISPR/Cas9が働かなかったので、新たな取り組みが必要である。この様な状況から「遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、イネでは現在のmultiplex CRISPR/Cas9コンストラクトとGFP融合CENH3を発現する系統を用いて動原体機能低下系統を作出し、これらを用いた半数体の作出を試みる。トマトでは、multiplex CRISPR/Cas9コンストラクトのプロモーターをより高発現なものに切り替えることによりゲノム編集の効率を上げる。加えて、CENH3の動原体局在能の低下した系統でも半数体が生じることが報告されたので、CENP-C結合領域を欠くCENH3を大量発現させ、動原体内での内在性のCENH3の割合を低下させることによる動原体機能低下系統の作出も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
基金は繰り越しが可能なので小額を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額は少額なので使用計画に変更は無い。
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