本研究の目的: 本研究では、「簡便で汎用性のある半数体作出法の確立」を目的とする。「半数体作出とその倍加」による「半数体育種法」は、純系を得る為の時間を大幅に短縮することができる。しかし、これまで半数体は花粉培養や異種交配により作出され、これらの方法を利用できる種はごく僅かであった。そこで、本研究では真核生物に普遍的に存在する動原体タンパク質および動原体DNAをゲノム編集により改変して、その機能を低下させる。続いて、この機能低下した動原体をもつ配偶子と正常な動原体をもつ配偶子を交配することにより、受精胚中で選択的に片親由来の染色体セットを脱落させ、半数体を効率的に作出する。
本年度実施した研究およびその成果: 昨年度にイネおよびトマトにおいて作成した内在性CENH3遺伝子を標的としたCRISPR/Cas9コンストラクトに加えてミヤコグサに対する同コンストラクトを作成し、動原体に局在するGFP融合CENH3(GFP-CENH3系統)、もしくはCENH3のN末をヒストンH3と置換したGFP-Tail-swap系統に対して形質転換した。トマトでは、T1世代においてGFP-CENH3系統の1系統、GFP-Tail-swap系統の3系統で内在性のCENH3に欠失/挿入変異が入っている系統が得られた。現在、これらの変異をホモにもつ系統を選抜中である。イネについては、現在形質転換体を選抜している。ミヤコグサでは、複数の薬剤耐性による選抜が難しいため、GFP-CENH3系統、GFP-Tail-swap系統およびCRISPR/Cas9コンストラクトについて個別に形質転換を行い形質転換体を選抜中である。今後は、これらの形質転換体の交配により半数体作出系統を作出していく。
|