研究実績の概要 |
1. イネの栽培化において脱粒性の喪失の原因となった遺伝子の解析 これまでに、申請者は、野生イネ(O.nivara)から機能型のsh4遺伝子をクローニングしている。また、先の申請者らによる研究によって、脱粒性遺伝子qSH1の準同質遺伝子系統であるNIL(qSH1)と、新規脱粒性遺伝子OSH15の突然変異体であるd6突然変異体(名古屋大学の北野先生より分譲していただいた)との交雑後代よりqSH1およびOSH15に関する4種類の固定系統(1. qSH1機能型:OSH15機能型、2. qSH1機能型:OSH15機能欠損型、3. qSH1機能欠損型:OSH15機能型、4.qSH1機能欠損型:OSH15機能欠損型)を作出している。平成27年度は、これらの4種類の固定系統に野生イネ由来の機能型のsh4遺伝子およびベクターのみを形質転換し、8種類の系統を作出した。平成28年度は、これらの8種類の材料を用いて、出穂直後から1週間毎に4週間後まで脱粒性の定量的な測定を行った。また、籾の基部の切片を作成し、詳細な形態観察を行い、3つの脱粒性遺伝子qSH1,OSH15, sh4の各遺伝子の離層形成および離層崩壊への関与を調べた。
2. イネの新規脱粒性遺伝子の探索 脱粒性遺伝子qSH1の準同質遺伝子系統であるNIL(qSH1)の種子約3,000個体にガンマ線照射を行い、自殖させ10個体から20個体を1バルクとして161バルクで収穫した突然変異2世代目(M2世代)の種子をすでに準備している。平成27年度は、161バルクの各バルクから50個体ずつ合計で約8,000個体のM2世代の個体を圃場に展開し、脱粒性に関する突然変異体の選抜を行った。平成28年度は、選抜した4つの難脱粒性突然変異体の脱粒性と離層観察および遺伝子型の確認を行った。また、野生型との交配および世代促進を行い、F2個体を得ることができた。
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