研究課題/領域番号 |
15K07260
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
赤木 宏守 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (50315587)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イネ / 野生種 / カドミウム |
研究実績の概要 |
イネ属の遺伝変異を広くカバーする19種、133系統について、高濃度の塩化カドミウム処理によって強制的に植物体のカドミウム濃度を高めてカドミウム耐性を解析した。カドミウムによる草丈の生長抑制率(カドミウム処理後に伸長した割合)は、系統によって大きな違いがあり、イネ属の植物がカドミウム耐性において多様であることが明らかとなった。特に、野生種のO.barthii(Aゲノム)とO.latifolia(CDゲノム)には、栽培種では見られなかった生長抑制率が20%以下のカドミウム耐性が高いと考えられる系統が存在していた。 O.barthiiとO.latifoliaの系統について、カドミウムに対する反応を詳しく解析したところ、O.barthiiの系統は何れも高いカドミウム耐性を持つこと、また、地上部のカドミウム濃度が急激に高まらない特徴を持つことが明らかになった。一方、O.latifoliaの系統は、地上部のカドミウム濃度が高く、系統によってカドミウムによる生長抑制の受け方が異なっていた。地上部のカドミウム濃度が100 ppmを超えても生長抑制率が20 %以下のカドミウム耐性が高い系統が存在する一方で、カドミウム耐性が弱い系統も存在することが明らかとなった。 ゲノム配列が公開されているO.barthiiについて、塩化カドミウム処理によって発現変動する遺伝子をRNAseq解析で解析した。O.barthiiの地下部で発現量の増加率の高かった遺伝子の多くは、解毒やストレス応答、代謝に分類されるものであった。このことから、O.barthiiの系統では、これらの遺伝子の発現量が増加したことで、カドミウムの無毒化、液胞内への隔離により、カドミウムによる障害が軽減したと考えられた。また、地上部では膜輸送体や二次代謝の遺伝子の発現量の増加率が高く、地上部に輸送されてきたカドミウムの排出などに関与しているのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネ属の植物がカドミウム耐性に多様であることを明らかにするとともに、カドミウム耐性の高い系統を見出すことに成功し、特に、Aゲノム種の中でO.barthiiには他の種には見られない高いカドミウム耐性を示す系統が存在することを明らかにした。 当初、同一種でカドミウム耐性が異なる系統の比較を計画していたが、O.barthiiにはカドミウム耐性が高い系統のみが含まれていたため、カドミウム耐性が高い系統に共通する遺伝子に着目することにした。O.barthiiのカドミウム耐性が高い2つの系統の遺伝子発現をRNAseq法により発現解析を行なうことで、O.barthiiで共通してカドミウムで発現誘導される遺伝子を特定することに成功した。 以上のように、イネ属においてカドミウム耐性に特徴ある系統を見出し、そのカドミウム耐性と関連する遺伝子の候補を見出せたことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
O.barthiiにおいてカドミウム耐性との関連が推定された遺伝子を見出した。これらの遺伝子について、定量PCR法でカドミウムによる発現変動を詳細に解析し、カドミウムと遺伝子発現との関係を明らかにする。また、カドミウム耐性が異なる他種の系統について、これらの遺伝子の構造および発現の特徴をO.barthiiと比較する。 O.latifoliaには、より高かいカドミウム耐性を示す系統が存在することを明らかにした。RNAseq解析によってO.latifoliaのカドミウム耐性に関わる遺伝子の特定を試みる。そのため、カドミウム耐性の高い系統と低い系統を比較することで、カドミウム耐性に関わる遺伝子を絞り込むことを計画している。O.latifoliaは4倍体のCDゲノムを有しており、また、リファレンス配列がない。そのため、解析方法を検討しながらデータ解析を行う予定である。
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