研究課題/領域番号 |
15K07260
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
赤木 宏守 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (50315587)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イネ野生種 / カドミウム耐性 |
研究実績の概要 |
イネ属の野生種でカドミウム(Cd)耐性が高いと考えられたO. barthii(AAゲノム)とO. latifolia(CCDDゲノム)の系統において、RNAseq解析で同定したCd耐性に関わると考えられる遺伝子について、リアルタイムPCRによる発現解析を行った。 O. barthiiのゲノムには、Glutathione S-transferase (GST)、Aldo/Keto reductase (AKR) およびAlkenal reductase (AER) をコードする遺伝子が複数存在しているが、それらの中で、特定の遺伝子がCdに対応して発現量を数十倍に増大させることが明らかになった。また、GSTとAKR遺伝子では、Cd処理3時間後から発現が急激に高まり12時間後にピークを示した。これに対し、AER遺伝子では、Cd処理後6時間後から48時間後まで徐々に発現量が増加し、遺伝子によってCdに対して異なる応答をしていることが示唆された。 一方、O. latifoliaでは、細胞壁に局在するPeroxidase (PRX)やGlycine Rich Protein (GRP) をコードする遺伝子の中に、Cd耐性系統で特異的に発現またはCdで発現量が増加する遺伝子が存在していることが明らかとなり、Cd耐性系統では細胞壁がCd耐性を高める役割を担っている可能性が示唆された。 Cdにより著しく発現が高まるAKRとAER遺伝子のプロモーター領域をO. barthiiのゲノムDNAからクロー二ングした。また、O. barthii のAKRとAER遺伝子およびO. latifoliaのPRXおよびGRPのcDNAの全長を増幅し、35sプロモーターおよびCd誘導プロモーターと連結したバイナリ―ベクターを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネ属の野生種のO. barthiiとO. latifoliaの系統において、RNAseqで見出したCd耐性と関連すると考えられる遺伝子について、リアルタイムPCRで発現パターンを明らかにし、Cd耐性に関与する遺伝子を同定した。 さらに、O. barthiiおよびO. latifoliaのCd耐性と関係していると考えられた、それぞれ2種類の還元酵素の遺伝子と、細胞壁に局在する2種類のタンパク質の遺伝子について、Cd耐性における役割を明らかにするための形質転換植物を作成するためのバイナリ―ベクターを構築した。 当初の研究計画に沿って研究が進み、最終年度に形質転換植物を作成して、遺伝子機能を解析できる状態となっていることから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
O. barthiiおよびO. latifoliaにおいてCd耐性に関与していると考えられる遺伝子を見出し、それらのcDNAを用いてCd誘導型および高発現型のバイナリ―ベクターを構築した。これらを用いて形質転換植物を作成し、形質転換植物においてCd耐性との関わりを詳細に解析し、これら遺伝子のCd耐性における役割を明らかにする。
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