研究実績の概要 |
森多早生/コシヒカリの遺伝的背景で検出されたイネ第2および第6染色体上のタンパク質含有率に関するQTLを準同質遺伝子系統(NIL)を用いて実証した。3カ年の試験で、第6染色体に関するNILは反復親の森多早生に比較した明瞭なタンパク質低減効果は認められなかったが、第2染色体に関するNILは0.6%程度低いタンパク質含有率を示し、QTLの有するタンパク質低減効果を実証することができた。 NILに反復親を戻し交配したF2集団を用いて、マップベースクローニングにより、タンパク質含有率に関するQTLのファインマッピングを試みた。QTL候補領域のうち、コシヒカリ由来断片を下流側30~33Mb付近に有する組換え個体が反復親の森多早生に比較して低いタンパク質含有率を示したことから、この付近にタンパク質含有率に関する遺伝子が存在する可能性が示唆された。貯蔵タンパク質のSDS-PAGEおよび免疫染色によるプロテインボディサイズに両親およびNIL間に差は認められなかった。 森多早生、コシヒカリおよびNILの開花後7日目の登熟種子を用いてRNAを抽出し、マイクロアレイによる発現解析を行った。全45,152遺伝子中、NILおよびコシヒカリの8.4~10.8%の遺伝子に森多早生比較で2倍以上の発現量差が認められた。マップベースクローニングで示された候補領域(30~33Mb)で10倍以上の発現差が認められた遺伝子「Phi-1-like phosphate-induced protein」はタバコ細胞培養で細胞分裂に関与することが示されており、本遺伝子がQTLの本体であれば、細胞分裂を活性化することで米粒を肥大させ、結果として相対的にタンパク質低減効果を示す効果が示唆された。
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