研究課題/領域番号 |
15K07268
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
千田 峰生 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30261457)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 黄ダイズ / 全面着色粒 / 種皮着色突然変異 / 褐色種皮 / 易裂皮性 / リグニン / フロログルシノール染色 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、ダイズ着色粒について研究を行い、以下の結果が得られた。 1. 日本で栽培される黄ダイズの遺伝子型はIIrrtt遺伝子型であることが多い。そのため、黄ダイズ生産現場で発生する Iからi への突然変異に起因する着色粒はiirrtt遺伝子型で褐色種皮を有する。このような褐色種皮では裂皮が起きやすい、すなわち易裂皮性であることが古くから知られている。このことは褐色着色粒の品質を大きく低下させる原因となっている。しかしながら、褐色ダイズの易裂皮性に関する機構は未だ明らかになっていない。平成27年度の研究で、褐色ダイズ種皮にはプロアントシアニジン(PA)が大量に蓄積していることがDMACA染色により明らかにされた。それに対して、黄ダイズ種皮にはPAがほとんど検出されない。平成28年度では、フロログルシノール染色により種皮におけるリグニン沈着の比較調査を行った。その結果、臍では黄ダイズおよび褐色ダイズの両方において柔組織にリグニン沈着が見られたのに対し、中間部や背側では褐色ダイズ種皮のみに頻繁なリグニン沈着が見られた。実際にリグニンの定量比較を行ったところ、褐色ダイズ種皮では黄ダイズ種皮の約3倍のリグニン含量であった。リグニンは種皮物性を左右する物質であり、褐色ダイズ種皮の易裂皮性はリグニン沈着による可能性が示唆された。 2. 平成27年度に全面着色粒の混入率を調査したところ、濃い褐色の全面着色粒が0.0088%で、薄い褐色の全面着色粒が0.0030%であった。平成28年度においても同様の調査を行った結果、濃い褐色の全面着色粒が0.0006%で、薄い褐色の全面着色粒が0.0021%であった。以上の結果より、異なる年度においても全面着色粒の混入率は非常に低いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度において、PAを検出するDMACA染色を行った。その過程で、フロログルシノール染色も予備実験として行ったところ、予期せぬ結果が得られた。すなわち、黄ダイズ種皮と褐色種皮でPA蓄積だけではなくリグニン沈着にも明らかな差が検出された。褐色種皮の易裂皮性は1930年に報告されていたがその原因は未だ明らかになっておらず、その機構解明が待たれている。褐色種皮の易裂皮性は黄ダイズ生産に発生する着色粒にも見られるため、その機構解明は本研究課題にも関連する。興味あることに、リグニン沈着と物性変化との関連が報告されている。平成28年度は褐色種皮のリグニン沈着についての研究を最優先して行い、論文として報告することができた。その結果、当初の研究予定であった、品種トヨハルカにおける着色粒発生率の比較調査はできなかったが、おおむね順調に研究は進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、まず平成28年度に実施予定であった黄ダイズ品種トヨハルカにおける着色粒発生率の比較調査を行う。それとともに、突然変異によって生じた i 遺伝子検出のためのDNAマーカー開発のための研究もあわせて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
かなり少額であったため、必要物品を購入できなかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算と合算して使用する。
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