本研究では、黄ダイズ生産における着色粒発生についての研究を進め、着色粒発生の低減・防止に役立てる。平成29年度では、以下の成果が得られた。
1. 遺伝子構造の特徴により、Ic遺伝子はI遺伝子よりも種皮着色突然変異が起こりにくい、すなわち着色粒が発生しにくい可能性がある。これを検証するため、Ic遺伝子を有する黄ダイズおよびI遺伝子を有する黄ダイズ間で着色粒発生率の比較調査を行った。用いた黄ダイズは、I遺伝子を有する北海道の黄ダイズ3品種(ユキホマレ、とよみづき、トヨムスメ)とIc遺伝子を有する北海道の黄ダイズ品種(トヨハルカ)および黄ダイズ系統(十育260号)である。比較調査の結果、I遺伝子を有する黄ダイズ群では799675粒(百粒重換算)中、335粒の着色粒が見出され、出現割合は0.04%であったのに対し、Ic遺伝子を有する黄ダイズ群では243138粒(百粒重換算)中、着色粒は見出されなかった。したがって、Ic遺伝子を有する黄ダイズで、着色粒が発生しにくい可能性を支持するデータが得られた。
2. Iからiへの突然変異および自殖により、ダイズ植物体の遺伝子型が i/iになった場合、I遺伝子の種皮着色抑制機能が失われ、着色粒が発生する。I遺伝子からi遺伝子への突然変異は、I遺伝子の候補領域であるGmIRCHSの欠失変異である可能性が高い。これを利用して、GmIRCHSの5'領域と3'領域をそれぞれ増幅するプライマーセットを設計することにより、着色粒を発生する i/i遺伝子型のダイズ植物体を検出するDNAマーカーを開発した。
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