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2015 年度 実施状況報告書

イネ茎葉部におけるデンプン分解制御に関わる遺伝子の機能およびその品種間差異の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K07276
研究機関名城大学

研究代表者

平野 達也  名城大学, 農学部, 教授 (30319313)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードイネ / デンプン分解 / 葉鞘 / β-アミラーゼ / α-アミラーゼ
研究実績の概要

出穂後のイネ葉鞘でのデンプン分解におけるβ-アミラーゼ遺伝子の機能を解明するために、β-アミラーゼをコードする遺伝子のひとつであるOsBAM5の機能解析を進めた。OsBAM5とGFPの融合タンパク質を発現させるベクターを構築し、タマネギ表皮細胞で一過的に発現させた結果、OsBAM5はプラスチド局在型のアイソフォームをコードしていることが明らかになった。また、OsBAM5の発現抑制系統をRNAi法によって作出し、出穂後の葉鞘におけるデンプン含量の変化を解析した。その結果、OsBAM5発現抑制により、葉鞘では特に夜間において野生型よりも多くのデンプンが蓄積していることがわかった。よって、今まで解析を進めてきたOsBAM2およびOsBAM3に加えて、OsBAM5もまた、出穂後の葉鞘におけるデンプン分解に重要な役割を担っている可能性が示唆された。葉鞘での発現量が多いβ-アミラーゼ遺伝子であるOsBAM9の発現抑制系統の作出を進め、OsBAM9の発現が実際に強く抑制されている系統のT2世代の種子が得られた。さらに、OsBAM9もまたOsBAM5と同様にプラスチド局在型のアイソフォームをコードしていることがわかった。また、OsBAM2とOsBAM5のダブルノックダウン系統、ならびにOsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5のトリプルノックダウン系統を作出し,現在そのT1世代の育成を進めている。
出穂後の葉鞘においてデンプン含量が急激に減少する特性を有するインド型多収品種のタカナリでは、α-アミラーゼ遺伝子のひとつであるRAmy2AのmRNA量が出穂後の葉鞘で急激に上昇する。数品種のインド型品種を用いた解析の結果、この現象はインド型品種に共通ではなく、タカナリが有する特性であることが強く示唆された。現在、タカナリにおいてRAmy2Aの発現が抑制されたRNAi系統の作出に成功し、T1世代の育成を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書に記載した平成27年度の計画では、葉鞘において発現量が多いβ-アミラーゼ遺伝子のうち、まだ解析が進められていないOsBAM5とOsBAM9に関して機能解析を進めることになっている。OsBAM5に関しては、GFPとの融合タンパク質の一過性発現系によってプラスチド局在型のアイソフォームをコードしていることを明らかにし、さらにRNAi法による発現抑制系統を用いて表現型の解析も進めることができた。OsBAM9に関しては、発現抑制系統による表現型解析はまだ実施できていないが、プラスチド局在型アイソフォームをコードすることを解明することができている。よって、OsBAM5とOsBAM9の機能解析についてはほぼ当初の予定通りに進んでいると考えられる。
また、出穂後の葉鞘でのデンプン分解におけるβ-アミラーゼの役割分担を明らかにするためのOsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5に関する多重発現抑制系統の作出も順調に進んでおり、平成28年度以降に表現型の解析を進める準備が整っている。さらに、インド型品種タカナリにおいてα-アミラーゼ遺伝子をコードするRAmy2Aの発現抑制系統を作出することに成功し、今後のタカナリでの機能解析についても予定通りに進めることが可能である。

今後の研究の推進方策

OsBAM9については、作出した発現抑制系統を用いて、葉鞘におけるデンプンおよび糖含量の変化を解析し、OsBAM9の機能の解明を進める。昨年度までに作出したOsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5の多重発現抑制系統を生育させ、出穂後の葉鞘におけるデンプン含量の変化、ならびに収量構成要素に及ぼす各遺伝子発現抑制の影響を、各単独での発現抑制系統と比較しながら明らかにする。
OsBAM2、OsBAM3およびOsBAM5のプロモーターの下流にGUSレポーター遺伝子を連結したベクターを導入した形質転換イネにおいて、それら遺伝子の発現における組織特異性を調査する。また、各遺伝子発現抑制系統の出穂後の葉鞘においてパラフィン包埋による横断切片を作成し、ヨウ素染色後の顕微鏡観察により、β-アミラーゼ各遺伝子の発現抑制が葉鞘組織におけるデンプン粒蓄積にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。
タカナリにおいて作出したRAmy2Aの発現抑制系統を生育させ、出穂前から登熟期にかけての稈や葉鞘におけるデンプンおよび糖含量の変化を解析する。それにより、多収品種のタカナリにおけるRAmy2A遺伝子の機能について明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

3月に実施した実験で使用した消耗品の請求が年度末の3月24日となり、当該年度内での会計処理期間を過ぎての請求書提出になったため。

次年度使用額の使用計画

実際にはすでに昨年度末に執行済みであり、すでにその消耗品を用いた実験を進めている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Two β-amylase genes, OsBAM2 and OsBAM3, are involved in starch remobilization in rice leaf sheaths2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Hirano, Takayuki Higuchi, Minako Hirano, Yu Sugimura and Hiroyasu Michiyama
    • 雑誌名

      Plant Production Science

      巻: 19 ページ: 291-299

    • DOI

      10.1080/1343943X.2016.1140008

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Involvement of α-amylase genes in starch degradation in rice leaf sheaths at the post-heading stage2015

    • 著者名/発表者名
      Yu Sugimura, Hiroyasu Michiyama and Tatsuya Hirano
    • 雑誌名

      Plant Production Science

      巻: 18 ページ: 277-283

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] β-アミラーゼ遺伝子, OsBAM5の発現抑制系統はイネ葉鞘においてデンプン過剰の表現型を示す2015

    • 著者名/発表者名
      杉村優有、平野美奈子、道山弘康、深山浩、平野達也
    • 学会等名
      日本作物学会第240回講演会
    • 発表場所
      長野
    • 年月日
      2015-09-05 – 2015-09-06

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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