最終年度は、昨年度までに引き続き本研究の最終目標である有望酒米品種の選抜のための基礎的データとなる品種および生産地の異なる酒米の形状解析(重さ、大きさ、たて・よこ・あつみ比、心白構造など)、含有成分分析(炭水化物、たんぱく質、脂質などの三大栄養素やミネラル解析)、内在する糖化酵素量の定量、および昨年度から追加した国税庁酒米統一分析法に則った吸水率と酵素消化性の解析を期間の前半を中心に行った。その結果、酒米の大粒性や心白構造、低たんぱく含量などをあらためて確認することができたとともにこれらの分散が大きいことをあきらかにした。 期間後半には酒米の炊飯実験を中心とし官能評価を実施したのち、優良品種の選抜のためにデータの多変量解析(因子分析およびクラスター分析など)を行っている。これらの解析結果からいくつかの食味に関する重要な因子をみつけることができ酒米品種間の食味のランク付けの可能性を示唆することができた。一方で課題も生じている。炊飯された酒米(“酒米ごはん”)の官能評価のむずかしさを起因とし、精度の高いパラメータの抽出や優良品種の選抜に課題を残すことがあきらかとなった。酒米ごはんはコシヒカリなどの一般良食味米と呈味、香り、テクスチャーが異なり官能評価に困難性を生じさせていると考えられた。そのため、本研究をさらに進展させるにはあたらしい官能評価の評価軸の確立と官能評価に依存しない分析項目の再設定が必要であると考えた。
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