研究課題
基盤研究(C)
イネにおいて高温不稔の発生による減収を回避するための技術としての可用性を検証することを目的として、既存水稲品種ヒノヒカリの葉蒸散能力を突然変異により増大させた多蒸散変異体系統を、開花期に高温と遭遇する可能性の高い日本国内の地域において、原品種とともに圃場群落条件で供試する高温遭遇実験を行った。開花期に高温に遭遇した年の原品種の玄米収量は平年の34%に激減したが、多蒸散変異体系統の減収程度は原品種より10ポイント緩和されおり、葉の多蒸散による群落冷涼化が高温不稔の回避に寄与したことが示唆された。
農業気象学
イネが開花期に高温にさらされることにより稔らなくなる現象である高温不稔は、もし発生するとその後の生育条件がどんなに良くても、もはや籾の中で子実が充実することはなく空籾となり、収量の深刻な減少をもたらす。地球温暖化の進行によりイネの高温不稔は今後の発生の増大が懸念されることから、葉蒸散の強化による群落の冷涼化が回避技術のひとつとして利用できる可能性が本課題の実施を通じて示されたことは、日本を始めとする世界の米食地域の食料供給の安定化に寄与しうる進展である。