研究課題/領域番号 |
15K07279
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山川 博幹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター作物開発研究領域, 上級研究員 (10370537)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イネ / 高温登熟 / 乳白粒 / α-アミラーゼ / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本年度は乳白粒の発生に関与するα-アミラーゼ遺伝子を特定するため2つの解析を行った。 1.α-アミラーゼ遺伝子胚乳過剰発現イネの解析:イネゲノムに存在する8個のα-アミラーゼ遺伝子をそれぞれ胚乳貯蔵タンパク質10kDプロラミン遺伝子プロモーターに連結したキメラ遺伝子をイネカルスに導入し、胚乳特異的発現過剰組換えイネを作出した。いずれのα-アミラーゼ遺伝子を導入した系統においても、形質転換当代および導入遺伝子が固定した次世代以降で、導入遺伝子を強発現する複数の系統が得られた。Amy1A、Amy1C、Amy2A、Amy3A、Amy3B、Amy3C、およびAmy3Dをそれぞれ強発現する種子は高いα-アミラーゼ活性が認められ、激しい乳白粒となり、胚乳デンプン粒の分解痕が観察された。一方、Amy3Eを強発現する種子は同様に高いα-アミラーゼ活性は認められたが、玄米の外観は通常の透明な整粒となり、デンプン粒の分解痕も認められなかった。 2.α-アミラーゼ遺伝子プロモーターレポーター遺伝子導入イネの解析:各α-アミラーゼ遺伝子について翻訳開始点より上流の2kbのプロモーター領域を取得し、それぞれにβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を連結したレポーター遺伝子を導入した組換えイネを作出した。形質転換当代および次世代以降で登熟期種子における発現部位を調査したところ、いずれのα-アミラーゼ遺伝子も登熟期の高温によってプロモーター活性が上昇した。このうち、Amy1Aは胚乳中心部、背側および胚盤周辺領域で、Amy3Cは胚乳中心部で、Amy3Dは胚乳腹側領域で高いプロモーター活性を示した。一方、Amy3Eは胚盤周辺領域でのみ高い活性が認められた。 これらのことから、Amy1A、Amy3C、Amy3Dが登熟期胚乳で強く発現し、乳白粒の発生に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
強発現で乳白粒を生じたα-アミラーゼ遺伝子のうち、登熟期の胚乳で比較的高いプロモーター活性が認められたAmy1A、Amy3C、およびAmy3Dに着眼して進める。次年度は、登熟期胚乳での発現を規定するプロモーターシス領域を決定する。すなわち、プロモーター領域を5’上流側より200bpずつ短縮した一連のデリーションレポーター遺伝子をイネへ導入し、登熟期胚乳等の各組織におけるプロモーター活性の有無を評価することによって、胚乳での発現に関わるシス領域を可能な限り(できれば200-500bp程度まで)絞り込む。また、最終年度に行うα-アミラーゼ遺伝子プロモーター結合転写因子のスクリーニングに向けて酵母ワンハイブリッドスクリーニングに用いるベクター作成等の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額852,960円は、本年度の研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究材料(ベクターおよび組換えイネ)の作成等に使用し、次年度に申請する金額と併せて、研究計画遂行のために使用する。
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