研究課題/領域番号 |
15K07281
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
前川 富也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 生産体系研究領域, 主任研究員 (40409090)
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研究分担者 |
越智 直 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 病害研究領域, 主任研究員 (90414614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ダイズ / 根粒 / 窒素固定能 / 黒根腐病 / ストレス応答反応 |
研究実績の概要 |
国内の大豆生産の改善に向け,様々なアプローチが試されているが未だ現場での原因不明生育不良が観察され,国内のダイズ収量が低迷している.我々はこの生育不良に黒根腐病が係わっている可能性を検討し,その詳細について研究してきた. 本研究者らは,これまでの研究により黒根腐病菌を接種したダイズが観察上健全株と変わりないにも関わらず,根粒窒素固定能が著しく低下することを発見した.似たような報告として,根粒に内生する非共生土壌細菌による窒素固定阻害や根粒内への非共生土壌細菌の進入により窒素固定低下の可能性を指摘した報告がある.このことから,根粒に他の微生物が感染する場合に,一般的な現象として,根粒の機能が停止すると考えることもできる. そこで,黒根腐病菌と他の病原菌(立枯病菌・炭腐病菌の2種類)を接種したダイズの根粒窒素固定能(アセチレン還元能,ARA)の変化を調査した.この2つの病原菌は日本で問題となっているダイズの生育後半の土壌病害を選択した.試験は,非破壊的で同一個体を連続的に測定する通気型アセチレン法を使用した.病原菌接種前および,接種後1週間おきに経時的にARAを測定して,感染ダイズのARAの低下・変化を明らかにした. 試験の結果,炭腐病菌と立枯病菌を接種した場合,ARAの低下が観察されず,ほぼ接種後のARAは一定の値を示す結果となった.当然,対照区(接種菌なし)も同様にARAの低下が見られなかった.これに対して,黒根腐病菌の接種のみでARAの低下が見られ,接種後10日過ぎから著しい低下が見られた. 以上のことから,根粒窒素固定能の低下は,黒根腐病菌に特有の現象である可能性を示す結果となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進捗状況は,おおむね順調に進展している. 本研究所の実験設備,構築した実験系,システム等も問題なく使用でき,実験を滞りなく遂行できた. また,本研究所に勤務する共同研究者(元研究分担者)との関係も良好で,今後の協力を得ることもできている.そのため,病原菌の取得,情報交換等も可能であり,今後の研究体制の構築にも問題はない. よって,全体計画としても順調に進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
本課題は研究進捗状況も順調であり,今後の研究も計画通りに進行することができると考えている.次年度の研究計画にあげている根分け法についても,システム構築に時間を割いて取り組んでいるので,次年度には問題なく試験に使用できると思う. 研究分担者が諸事情により,研究計画から抜けてしまったので,分担者の計画部分についての実行が不可能となっている.他の研究者で代用することができず,本課題においては,担当部分の研究課題は実行不可能であり,その部分の研究計画は変更を余儀なくされている. しかしながら,元研究分担者との協力関係,助言を得ることが可能で良い関係が築けており,全体としての計画遂行は問題ない.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,研究費の効率的な使用をして発生した残額である. また,分担研究者が諸事情により研究課題から抜けてしまったので,その分の残額も次年度使用額として発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額 470,325円は,実験の再現性のための精度を向上させるために,実験回数を増やす経費に使用することを計画しており,次年度の研究計画遂行のために効率的に使用する.
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