研究課題/領域番号 |
15K07283
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
平 智 山形大学, 農学部, 教授 (20167480)
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研究分担者 |
松本 大生 山形大学, 農学部, 助教 (30632129)
池田 和生 山形大学, 農学部, 准教授 (80555269)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミツバアケビ / 後発型自家不和合性 / 混合受粉 |
研究実績の概要 |
ミツバアケビの栽培においては,自家不和合性に由来する不安定な結実が栽培上大きな問題になっているものの,その詳細はほとんど明らかにされていない。近年、その近縁種であるアケビ種は後発型の自家不和性(late-acting self-incompatibility; LSI)を有することが明らかにされている。本研究では,ミツバアケビの自家不和合性機構に関する基礎的な知見の獲得と,その果実生産に対する影響の評価を目的として、一連の調査を計画している。 本年度は、ミツバアケビの主要栽培系統の一つである‘ふじ紫’を対象として、受粉時の自家花粉の混入が着果に影響を及ぼしえるか調査を行った。昨年度に‘ふじ紫’と交配和合であることが確認された‘秋華’を他家花粉親とし,自家花粉と他家花粉を1:1、1:3、1:9で混合した自家他家混合花粉受粉処理、ならびに他家受粉を行う一日前もしくは一日後に自家受粉を行う追受粉処理を行い、それらの着果の推移ならびに落果の波相を観察した.追受粉処理ならびに1:1自家他家混合受粉処理では結実がみられず,また1:3ならびに1:9自家他家混合受粉処理では自家花粉の混入率が上がるに従って着果率が低下していた.1:3ならびに1:9自家他家混合受粉処理で着果した果実は他家受粉果実と同程度の種子を含んでいたことから,自家花粉による着果阻害は形成種数の変化を介して起こったものではなく、受粉刺激によるものである可能性が考えられた。 このことを確かめるため、自家花粉管と他家花粉管がともに胚のうに到達しえるか顕微鏡下での確認を試みた。20℃に設定した人工気象器内で切り枝上の雌花に自家受粉もしくは他家受粉を行い、受粉後4日の花粉管伸長を顕微鏡下で観察したものの、受粉後4日ではどちらの花粉管も子房に到達しておらず、胚珠周辺における花粉管の挙動を調査することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの達成目標として(a)アケビ6栽培系統の総当たり交配、(b)混合花粉受粉・追受粉に関する予備試験および(c)受粉雌ずいにおける花粉管伸長観察、の3項目をあげていた.昨年度には(a)しか達成できなかったものの、本年度では(b)について一定の結果が得られたうえ、(c)に関しても受粉後の観察時間や方法を検討することができた。一方で最終年度の努力目標として設定した(d) 交雑集団間の総当たり交配および戻し交配に関しては、本年に獲得した交雑種子が発芽しなかったことから実施が困難な状況になりつつある。このような各課題の進捗状況を総合した結果,「おおむね順調に進展」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まだ十分に結果が得られていない調査(c)を中心に研究を展開する。加えて引き続き調査(d)の準備を進めるべく、交雑種子の獲得と育成を進める。さらに次年度以降には、調査(b)に関わる発展的課題として、結実に必要な他家花粉濃度についてさらに検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、交雑実生を育成するための栽培設備として平棚を設置する予定であったが,交雑種子が発芽しなかったために栽培設備設置は次年度に行うことにした.なお、次年度使用額が8万8千となったことについては、実際の交付金額にあわせて平棚から垣根棚に変更し栽培設備費用を抑えた一方、予備試験の結果、花粉管伸長観察のための顕微鏡設備の拡充が必要となり、予想外の出費が生じたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、全ての次年度使用研究費は交雑実生を育成するための垣根棚の設営に使用する。
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