ミツバアケビの栽培においては,自家不和合性に由来する不安定な結実が栽培上大きな問題になっているものの,その詳細はほとんど明らかにされていない。近年、その近縁種であるアケビ種は後発型の自家不和性(late-acting self-incompatibility; LSI)を有することが明らかにされている。本研究では,ミツバアケビの自家不和合性機構に関する基礎的な知見の獲得と,その果実生産に対する影響の評価を目的として、一連の調査を計画している。 本年度は、1)自家受粉雌ずいおよび他家受粉雌ずいにおける花粉管伸長の観察、2)‘ふじ紫’花粉と‘秋華’花粉の混合花粉(1:3)を受粉した‘ふじ紫’後代実生の花粉親推定、3)‘ふじ紫’の有効受粉期間の調査をおこなった。 1)については、他家花粉管と同様に、自家花粉管が胚珠付近まで到達することが確認されたことから、ミツバアケビもまた後発型の自家不和合性を示すことが確認された。2)については、まず、4つのSSR候補について‘ふじ紫’と‘秋華’における多型を確認した。うち、3つのマーカーについては両系統でともにヘテロであったものの、いずれも少なくとも一つのバンドサイズが系統間で共通していた。うち一つのSSRマーカーを用いて自家他家混合受粉後代実生38個体の花粉親推定を試みたものの、自家花粉に由来することが明確な実生は見つからなかった。3)については、開花後4日までの他家受粉では80%以上の高い着果率を示し、開花後7日以降の受粉では日数の経過に従って徐々に着果率が低下し、開花後14日の受粉では着果率が10%にまで低下することが明らかになった。
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