研究実績の概要 |
鉢物カーネーション'Cherie'の正常花系統(WT)および奇形花系統(mlf) を異なる温度条件で栽培したところ、全てのWT株は正常花のみを咲かせたが、 mlf 株は多数のガク状器官をもつ葉化花、多花弁花、多雌ずい花、貫生花などの表現型を示した。mlf 株は26℃では全く異常花を発生しなかった。17/5℃で栽培した mlf株 を 23/18℃に移したところ、奇形が緩和された。反対に、26℃で正常であった mlf 株を17/12℃に移したところ、奇形花が発生したことから、この奇形は温度帯に可逆的に反応することが示された。15℃一定下の mlf 株は92.2%の奇形花を形成し、20℃一定 および25/20℃ 区ではそれぞれ3.1% および1.3% と有意に低い奇形花率を示した。花芽の観察により、WT と mlf における差異はがく片形成期後に認められ、15℃における mlf 株の花弁原基の分化はWTに比べて不明瞭であった。 15℃または20℃の温度条件下の若い花芽についてRNA-seq解析を行った.また、WTおよびmlf 株のゲノムシークエンスを行った。RNAseqにより,ストレスや低温反応に関わるHSC70,茎頂における幹細胞の密度を支配するWushcelおよびサイトカイニンの活性化に関わるLOG3,4および5などはmlf 株花芽で発現が高かった。一方,花芽の頂端分裂組織の維持に関わる遺伝子はmlf 株の花で発現が低下した。特に,HSC70およびWushchelにおいてSNIPが検出された。mlf 株ではHSC70 およびWuschelに何らかの変異があり,両者が15℃で過剰に発現し,サイトカイニンの活性が高まった結果、花芽の分裂組織が拡大し、花の扁平化や器官の異常な増加につながった可能性が示唆された。
|