研究課題/領域番号 |
15K07296
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中村 郁子 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助教 (40585858)
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研究分担者 |
筧 雄介 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (50636727)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 二倍体イチゴ / ブラシノステロイド |
研究実績の概要 |
前年度ブラシノステロイド(BR)の生合成阻害剤であるパクロブトラゾール(PCZ)を処理し続けた個体では果実の形成が抑制される傾向が見られたことから、今年度はその再現性を確認した。しかし、この実験では前年度の再現は得られず、コントロール及びPCZ処理のいずれでも同様の着果が見られ、昨年度の結果は培養条件が適切でなかったと考えられた。一方今回はPCZ処理により個体の矮化、葉のクロロフィルの増加、果実の矮化などのBR欠損植物特有の傾向が見られ、これらは再現が得られた。果実は横方向の肥大はコントロール処理とほぼ同じであるが、縦方向の肥大が抑制されることにより矮化していた。現在組織切片を作製し、縦方向の肥大抑制が細胞伸長と細胞分裂のいずれに依存するのか検討中である。またPCZ処理による形態変化がBRに依存することを確認するために天然で最も活性の強いブラシノライドを処理し、回復実験を行っている。さらに今年度はBR生合成遺伝子の発現が高い初期の果実の髄に直接薬剤を処理するために径のごく小さい注射針を利用する方法を開発し、この方法を利用した処理を開始している。当初BR生合成遺伝子の形質転換体の作出を計画していたが、上記の結果から個体全体の矮化が予想されることから、当初の計画を変更し、薬剤処理と同様の方法で注射により着目している時期のみに一過的発現する系を検討している。またBRによるオーキシンおよびジベレリンの生合成遺伝子の発現制御について解析するためにこれらの遺伝子の特定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度開始当初前年度の結果の再現が得られないという問題があったが、植物の育成方法の安定化に成功し、再現のある結果が得られており、予定通り組織切片を用いた解析に進んでいる。一方形質転換体の作出については当初の予定から方針を変更したが、一過的発現系に変更することで安定株を作出するよりも必要な実験期間が相当に短縮できることから大きな遅延は伴わないと考えられる。BRにより誘導される遺伝子の網羅的発現解析は処理方法の見直しを行ったため、解析を次年度に延期したが、主要な解析対象であるオーキシン及びジベレリンの生合成遺伝子については特定を終了し、おおむね予定通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はPCZ処理による形態変化がBLにより回復することを確認し、組織切片を作製することによりBRによる果実発達について解剖学的解析を進める。また、注射によるPCZおよびPCZとBLの投与により変化する遺伝子の解析を行う。遺伝子解析は特にオーキシン及びジベレリンの生合成遺伝子に関して注目して進める。FvDWARF4の一過的過剰発現および発現抑制により、PCZの長期投与の影響が再現されることを確認する。また安定形質転換株の作製に引き続き取り組み、FvDWARF4およびFvDWARFの発現組織の解析による上記の結果との整合性確認を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していたBRにより制御される果実発達初期の遺伝子の網羅的解析を行うために多額の消耗品費が生じる。また、イチゴの栽培は害虫が発生しやすいためにきめ細かな管理が必要で有り、栽培管理の補助員を雇用するため人件費が必要となる。また、海外機関との連携を図るために次年度は渡航費用として出張費が必要となる可能性がある。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は今年度から延期したBRにより制御される果実発達初期の遺伝子の網羅的解析を行うために高額の消耗品(分子生物学用試薬)を購入する。イチゴの栽培管理用の人件費も使用予定である。また、海外機関との連携を図るための計画を調整中であり、調整が出来れば旅費が必要となる。その他、一般試薬、栽培用のポット及び用土類、プラスチック消耗品、学会参加の旅費、英文校閲及び論文投稿費用として使用する。
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