本研究は青枯病菌の非病原性変異株(PC株)を利用したナスにおける半身萎凋病と青枯病の複合防除技術を確立することを目的とした。 1)青枯病発病抑制に効果的なナスへのPC株接種時期の検討 播種から苗出荷までの期間で定植後の青枯病発病抑制に効果的なPC株の接種時期を検討した。ナス育苗期の異なるステージ(種子、子葉、1-2葉齢、3-4葉齢、3-5葉齢:本接種7日前、4-5葉齢:本接種前日)でPC株の菌液を1回接種して4-5葉齢まで育苗した個体、 PC株を接種しないで育苗した4-5葉齢の個体、種子から4-5葉齢までに定期的に6回PC株を接種した個体に対して、青枯病菌の病原性株を本接種し、発病抑制効果を調査した。PC株の前接種から病原性株の本接種までの期間が短い方が発病抑制された。本接種前日に1回接種した区と定期的に6回接種した区の発病抑制効果は同等であった。PC 株接種の労力と発病抑制効果から、ナスの苗生産において出荷直前にPC株を一度だけ接種することが定植直後の青枯病の発病抑制に有効であると考えられた。 2)接木苗へのPC株接種による青枯病と半身萎凋病の複合防除技術の検討 前年度の結果から、青枯病と半身萎凋病に効果的な台木としてトナシムを選定し、千両二号と接ぎ木した苗と千両二号の自根苗を供試し、各苗のPC株接種区と無接種区を設け、青枯病と半身萎凋病のそれぞれの病害防除効果を調査した。その結果、青枯病の防除効果は、自根苗/無接種区<接ぎ木苗/無接種区≦自根苗/PC接種区<接ぎ木苗/PC接種区となり、半身萎凋病の防除効果は、自根苗/無接種区<自根苗/PC接種区<接ぎ木苗/無接種区<接ぎ木苗/PC接種区の順であった。接ぎ木苗では供試した苗の約半数で各病害の発病がみられたが、接ぎ木苗にPC株を接種した場合では、半身萎凋病の発病を約90%抑制でき、青枯病に対しては発病を完全に抑制することができた。
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