研究実績の概要 |
オリエンタルハイブリッドの起源であるユリ属Archelirion節植物のヤマユリ,サクユリ,ササユリ,ヒメサユリ,カノコユリ,タモトユリ,ウケユリのうち,最終年度は特にヤマユリ,ササユリ,オトメユリの種分化を明らかにするための研究をおこなった。各種の自生地集団(一部ex situ保存個体)において,形態調査とDNA分析試料の採取とSSRマーカーを用いた解析を行った結果,各野生種の形態的・遺伝的多様性,種間の類縁関係,各集団の遺伝構造などが明らかとなった。また,各野生種各地域集団とオリエンタルハイブリッド品種群との関係性では,最終年度はウケユリの自生地外保存系統を中心に調査し,前年度までの研究成果と総合してオリエンタルハイブリッド各品種の起源種の推定を試みた。 栽培化に関わる遺伝子の探索では,花の色模様における部位特異的な色素の蓄積がどのように起こるのかを明らかにするため,‘次世代シークエンサを用いてアントシアニン生合成と輸送に関わる遺伝子をほぼ一揃い単離し,RNA-seqで発現量を調べた結果,これら遺伝子のほとんどは赤筋で強く発現していたことから,‘Dizzy’花弁の赤い筋はこれらの転写調節に起因すると考えられた。そこで,アントシアニン生合成遺伝子の発現調節に関わる転写因子を調査した結果,‘3つのSubgroup 6 R2R3-MYB遺伝子が発現しており,その内MYB12の発現が最も強く赤筋で発現量が高かったことから,MYB12が赤筋の主な転写因子であることが分かった。花弁全体で発現しているMYB12遺伝子はカノコユリとオトメユリ由来であるが,Dizzy’のMYB12遺伝子はヤマユリの変種‘紅筋’のものと塩基配列が一致したことからヤマユリ由来と考えられた。また,カノコユリ・オトメユリとヤマユリのMYB12オーソローグ遺伝子は発現様式が異なると考えられた。
|