ニホンナシの「みつ症」は、果実成熟の進行に伴い、果肉の褐変などが見られる生理障害で、商品価値の低下を招く。二十世紀梨の子孫の品種で頻発することから、遺伝的な要因の関与が示唆されるが、多数の遺伝子が関与する難関形質とされ、その遺伝子群の実態は不明である。また、感受性系統であっても環境変動も大きく、年次によって発症の程度が異なる再現性の低さから、解析が困難な形質である。そこで、本研究では、申請者らが作出した「みつ症」感受性系統、非感受性系統の兄弟系統を2組用いることとした。これらの系統では、感受性の系統は毎年全ての果実に「みつ症」を発症する一方で、非感受性系統ではたとえ過熟となっても「みつ症」を発症しないため、再現性が極めて高く、解析が容易で信頼性の高い結果が得られる。 本研究では、それぞれの兄弟間での遺伝子発現を「みつ症」発症前の未成熟な果実からマイクロアレイで比較し、感受性系統に特徴的な遺伝子発現を抽出し、2組の兄弟で共通の特徴を見出した。また、これらの系統の果実形質を詳細に解析した。2017年度までに感受性系統で高い発現を示す遺伝子を40、低い発現を示す遺伝子を75個見出した。これらの遺伝子群の中には、メタロチオネイン、インベルターゼ、ホルモン関連遺伝子群が含まれていた。2018年度は、リアルタイムPCRによるマイクロアレイ解析の結果の検証を完了させた。また、ナシゲノム情報を利用してこれらの遺伝子群の染色体上の位置の推定を行い、これらが特定の染色体上に座上していることが明らかとなった。現在はここまでの結果で論文執筆中である。
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