研究課題/領域番号 |
15K07306
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研究機関 | 独立行政法人酒類総合研究所 |
研究代表者 |
小山 和哉 独立行政法人酒類総合研究所, 研究部門, 主任研究員 (30416424)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 色素芳香成分 / 機能性成分 / ブドウ / 二次代謝 / 環境応答 / ゲノム科学 |
研究実績の概要 |
ブドウ果実における機能性成分であるフェノール化合物、また、テルペノイド、ノルイソプレノイド等の揮発性成分などの主要な二次代謝産物を網羅的に測定するHPLC及びGC-MSを用いた系を確立した。テルペン類などの揮発性成分については、ブドウ中で配糖体(結合型)として存在している割合が高い。結合型の揮発性成分の分析は、固相抽出カラムにて分画後、酵素処理等によって遊離型とし、SBSE-GCMS法により網羅的な解析を行った。この分析方法を活用し、日本で栽培されている代表的な白ワイン用ブドウ2品種の収穫期の果実を分析し~100成分を仮同定した。次に、遮光処理、各種植調剤処理を行った成熟期のブドウ果実中における二次代謝成分の変動について解析を行った結果、品種や処理によって特徴的に変動する成分が抽出された。また、同品種の前年度に処理を行ったサンプルを使用しこれまでに実施済みのマイクロアレイデータの再解析を行い、二次代謝系の成熟期における変動について解析した。 また、赤ブドウについては、国産赤ワイン用品種16品種におけるフェノール化合物組成について網羅的な解析を行った。プロアントシアニジンについてはフロログルシノール分解法を用い、ポリマー構成成分組成に関して分析した。アントシアニン、プロアントシアニジン、フラボノール及びスティルベン計48成分について定量し、プロファイルの比較を行った。ヨーロッパ系品種、アメリカ系交配種、山ブドウ系交配種においてそれぞれ特徴的な成分が抽出された。現在、その環境応答性について調査を実施している。赤ブドウのポリフェノールの特徴解析に関して、データをとりまとめ、国際学会発表を行う予定である(平成28年6月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブドウにおける二次代謝産物の網羅的な解析系をたちあげ、各種環境下、多品種の果実におけるその組成解析を行い、変動を示す成分を抽出することができた点については、計画どおり進捗していると考えられる。計画している遺伝子発現解析については今年のサンプルでは実施できていないが、同品種の前年度に処理を行ったサンプルを使用しこれまでに実施済みのマイクロアレイデータの再解析を行い、二次代謝系の成熟期における変動について解析した。また、遺伝子発現解析用のサンプルは凍結保存しており、来年度すみやかに実施可能であると考えられる。 以上のことから、本年の計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度解析を行ったように、来年度以降、醸造用ブドウ品種の成熟期の変動、環境応答性について、より広く調査を行うとともに、二次代謝成分組成の変動等がみられたサンプルを選抜し、遺伝子発現解析を行う。得られた遺伝子発現プロファイルから既知の二次代謝生合成系遺伝子群と相関した発現プロファイルを示す(制御)遺伝子を絞り込む。 また、スクリーニングにて絞り込んだ候補遺伝子について、ブドウやモデル植物を用いた形質転換体作成等により機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の予算については、網羅的な遺伝子発現解析にかかる費用を大きく計上していたが、遺伝子発現解析の予定が若干遅れたため、次年度使用額となった。遺伝子発現解析が遅れた理由としては、二次代謝産物解析系の立ち上げに時間を要した点、また、これまでに同品種を用いて、既に実施済みのマイクロアレイデータの再解析を先行して行った点などがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度に、シーケンス委託解析(イルミナ社シーケンサー)、カスタムマイクロアレイ作成、遺伝子発現解析消耗品類、定量PCR等の酵素類、遺伝子クローニングキット購入など候補遺伝子スクリーニングのための遺伝子解析に主に使用する計画としている。
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